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原付バイクを少年が乗っていた。
荷台には野菜の入ったダンボールを2つ重ねており、買い物帰りというより収穫した野菜を運んでいるというのが印象だ。
街中にありながら、うらぶれた一軒の飲食店に原付を止めると、ヘルメットを外した。
まだ高校生ぐらいだろう。
顔の輪郭は丸く、顎が尖っていないため幼く見えるかもしれないが、腰の座った目つきをしている。
でも、どこか愛敬のある表情をしていた。
小柄で、ほっそりとした体型だが、しっかりと筋肉がついていることが服の上からでも分かる。
髪の毛はやや長めであり、前髪も目に被るくらい長い。
しかし、それを後ろに流しているため、爽やかな印象を受ける。頭には黒いバンダナを鉢巻状にして巻いてる。ファッションというよりも、髪をまとめたくてしているのが感じられる。
名前を、榊拓真と言った。
拓真は、店の前に原付を止めて『日の出食堂』と書かれた店内に入ると、厨房の奥に声をかける。
「こんにちは、実り農園です。野菜を、お届けに来ました」
すると奥から女性が出てきた。
20代後半、30歳前といったところか。
ウェーブがかかった黒髪に三角巾をし、エプロンをつけていた。
背が高くスラッとしている。
細身ではあるが胸は大きく膨らんでおり、健康的な色気を感じさせる。
年齢は若いのだが、人妻のような妙な艶っぽさがある女性だ。
女性は、優しそうな笑顔を浮かべている。
この店の女主人であり、名を佐枝由紀恵と言う。
由紀恵はカウンターから出てきて、段ボール箱を受け取る。
「榊君、いつもありがとう。実り農園さんの有機野菜は、お客さんから評判が良いのよ」
すると拓真は、照れくさそうに頭をかいた。
「家のような農園の野菜を使ってくれて、こちらこそありがとうございます」
拓真は誠心誠意のお礼を述べた。
すると由紀恵は首を横に振って、そうではないと言う。
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