第5話 秘密に迫る時

6/10
前へ
/72ページ
次へ
 さらに、探偵・真世の推理は続く。 「でも、その羽振りの良さが気になるよねぇ。もしかして……してたりとか?」 「ママ活って?」 「ほら、一時期“パパ活”っていう言葉が流行ったでしょ? 若い女の子が、経済的に余裕がある年上の男の人と食事やデートをする対価にお小遣いをもらうっていう、言わば“大人版援助交際”ってヤツだよ。その“パパ活”の男女逆バージョンが“ママ活”ってワケ!」 「え、援助交際っ……?!」 「もちろん、カラダの関係になっちゃえばそれなりにもらえるだろうし……綾乃の彼次第じゃ、大金が貯まるほどのお小遣いも貰ってるかもね」  あの1000万の残高は、ママ活によって稼いだお金も含まれているのだろうか。  可能性はゼロではないのかもしれない。 「(あの高そうなスーツや腕時計も、ママ活で女の人に買ってもらった物なのかもしれないってこと? でも……いくら何でも葵の性格上、他人からそんなものを平気で受け取れるとは思えない)」  グルグルと考え始めるとキリがない、謎の数々。  俯いて一点を見つめる綾乃の様子にハッとした真世は、慌ててフォローに回った。 「あっ……で、でも、それはあくまで私の推測だからさっ! 綾乃の彼が必ずしもそうってわけじゃ──」 「うん、私……」  ギュッと膝の上の両手を握りしめ、綾乃は言った。 「私、彼のこと……信じてるから。アイツに限って私以外の女の人と二人だけで会ったり、男女の関係になったりなんて……絶対にありえないもん」  ——そう、いつだって葵は綾乃の一番の理解者であり、味方でいてくれた。  間違ったことをすれば本気で叱ってくれるし、かと言ってピンチに陥れば誰よりも早く駆けつけて助けてくれる。  そんな彼が裏切るはずなんてないのだ。  そう強く信じて微塵もブレない綾乃を見つめて、真世は少し安心したふうに笑ってみせた。 「そっか、なら彼の方からまた会ってくれるまでもう少し待ってみたら? それに何か事情があって今は話せないだけで、ちゃんとしたワケがあるのかもしれないしさっ!」 「……うん、そうしてみるね」  綾乃も気を取り直して真世の顔を見上げたその時……  レストラン内の遠くを見つめる真世が唐突に話を切り替えた。 「ねぇ、綾乃……私、実はさっきからずっと思ってたんだけどさ……」 「……ん、なに?」 「綾乃の後ろ……あっちの窓側の席に座ってる男の人、すっごくカッコいいのっ……!」 「えぇ……?」  目の前の自分を通り越したその目線の先に、綾乃はそれとなく振り返ってみた。 「……え?」
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加