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さらに、探偵・真世の推理は続く。
「でも、その羽振りの良さが気になるよねぇ。もしかして……ママ活してたりとか?」
「ママ活って?」
「ほら、一時期“パパ活”っていう言葉が流行ったでしょ? 若い女の子が、経済的に余裕がある年上の男の人と食事やデートをする対価にお小遣いをもらうっていう、言わば“大人版援助交際”ってヤツだよ。その“パパ活”の男女逆バージョンが“ママ活”ってワケ!」
「え、援助交際っ……?!」
「もちろん、カラダの関係になっちゃえばそれなりにもらえるだろうし……綾乃の彼次第じゃ、大金が貯まるほどのお小遣いも貰ってるかもね」
あの1000万の残高は、ママ活によって稼いだお金も含まれているのだろうか。
可能性はゼロではないのかもしれない。
「(あの高そうなスーツや腕時計も、ママ活で女の人に買ってもらった物なのかもしれないってこと? でも……いくら何でも葵の性格上、他人からそんなものを平気で受け取れるとは思えない)」
グルグルと考え始めるとキリがない、謎の数々。
俯いて一点を見つめる綾乃の様子にハッとした真世は、慌ててフォローに回った。
「あっ……で、でも、それはあくまで私の推測だからさっ! 綾乃の彼が必ずしもそうってわけじゃ──」
「うん、私……」
ギュッと膝の上の両手を握りしめ、綾乃は言った。
「私、彼のこと……信じてるから。アイツに限って私以外の女の人と二人だけで会ったり、男女の関係になったりなんて……絶対にありえないもん」
——そう、いつだって葵は綾乃の一番の理解者であり、味方でいてくれた。
間違ったことをすれば本気で叱ってくれるし、かと言ってピンチに陥れば誰よりも早く駆けつけて助けてくれる。
そんな彼が裏切るはずなんてないのだ。
そう強く信じて微塵もブレない綾乃を見つめて、真世は少し安心したふうに笑ってみせた。
「そっか、なら彼の方からまた会ってくれるまでもう少し待ってみたら? それに何か事情があって今は話せないだけで、ちゃんとしたワケがあるのかもしれないしさっ!」
「……うん、そうしてみるね」
綾乃も気を取り直して真世の顔を見上げたその時……
レストラン内の遠くを見つめる真世が唐突に話を切り替えた。
「ねぇ、綾乃……私、実はさっきからずっと思ってたんだけどさ……」
「……ん、なに?」
「綾乃の後ろ……あっちの窓側の席に座ってる男の人、すっごくカッコいいのっ……!」
「えぇ……?」
目の前の自分を通り越したその目線の先に、綾乃はそれとなく振り返ってみた。
「……え?」
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