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「なーるほどねぇ……ギックリ腰のくせして、美女を口説くような元気だけはあるってワケね」
その立ち姿を見上げた葵は、またまた化け物を見るような目で恐れ慄いた。
その戦慄してる顔ですら綺麗で余計に癇にさわる。
「あっ……綾乃っ?!」
その傍らで、目をパチクリさせて固まる美女。
「誰よ、この人! ギックリ腰で動けないなんて私に嘘ついてまで、こんな所で何してるの?!」
「あ……い、いや……じ、実はさぁ、そうそう! 友達のお姉さんなんだけど、弟の借金で悩んでるみたいで俺が相談に——」
「桐矢くん、あなた……恋人の誘いよりも私と会う夜を優先してくれたの?! やだ、嬉しいっ……」
咄嗟に作り上げた言い訳を見事にぶち壊した美女。
その赤く染まる頬を見て、綾乃の怒りは頂点に達した……。
「う、植田さんっ?! あ、あの……これにはワケが……!」
ここでも何の説明もなく、冷や汗をかいてあたふたするだけの葵に綾乃は冷たく言い放った。
「……ふーん。じゃ、そのウエダさんと二人で楽しい夜を過ごせば?! 私……帰る!!」
「あっ……おい綾乃っ!」
ズンズンと通路を突き進み、元いたテーブルに残されていた真世の腕を掴む。
「ちょっ……綾乃、どうしたの?!」
「ごめん真世、場所変えよ!」
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