最終話 愛の行方は、前途多難なようです。

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 しかし、そこで大きな疑問が1つ浮かび上がった。 「でも、それならどうしてもっと早く独立したこと私に話してくれなかったの?」  その問いかけに、葵はピクッと反応を見せた。 「会社の人たちに黙ってたのはともかく、毎回嘘ついてごまかしてまで私に隠してたなんて……私のこと、信用してもらえてないみたいでちょっとショックだったかも……」  途端に気まずそうに目を逸らすと、葵は耳の裏を指で触り始めるのだった。 「そ、それは……さ、その……っ」 「……なに?」 「……っ」  煮え切らないその態度に、ついまた苛立ってしまう綾乃。 「なによ、もうっ」  ムッとして詰め寄ろうとした時、突然スッと動き出した葵がデスクの方へと向かった。そしてそれを目で追うしかない綾乃に背中を向けたまま、葵はデスクの引き出しに手を掛けてぼやき始める。 「あーあ、ほんとはこんなトコで渡したくなんかなかったのになぁ。ハダカのままだし……」 「え……?」  言っていることの意味がわからないはずなのに、なぜかドキッとした。  そして引き出しの中から取り出した物を持って戻り、綾乃に向かってその手を差し出す彼の顔を見上げた瞬間にそれはより一層強さを増すのだ。 「……ほい。」  ぶっきら棒に手渡されたそれは……  薄いピンク色のリングケース。 「これって……!」  一気に心臓がドクンドクン……と跳ね上がっていき、持つ手が微かに震えだしてしまう。 「先に言っとくけど、素人レベルだから出来栄えには期待すんなよな」  チラチラと落ち着きなくこちらに目をやる葵の前で、綾乃はリングケースの蓋を開けた。  そこにあったのは、真っ白な布張りの真ん中に刺された1個の指輪。
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