最終話 愛の行方は、前途多難なようです。

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 ピンクゴールドのリングの中央には大きなダイヤモンドが輝き、その存在を引き立てるように両サイドを流れるラインには小さなダイヤがいくつも散りばめられている。   「土台とストーンはさすがに買ったんだけど、装飾デザインだけは自分の手で創りたくってさ。オーダーメイドって手もあったけど……誰の手にも触れさせたくなかったんだ」  それは、この指輪がこの世に1つだけしかないという証。  どこにも売っていない、たった1つだけの……。 「——すっごく女らしくて綺麗で、可愛いデザイン……」  真っ先に出てきた言葉は、その指輪を見つめて最初に感じた感想だけだった。 「こんな指輪、ほんとに私がもらってもいいの……? 私なんて、お風呂上がりにバスタオル1枚で缶ビール煽ってるような女なのにっ……!」 「………。」  そして、マジマジと指輪を見つめるだけの綾乃の顔を横から覗き込んで、彼はフッと笑って言った。 「お前に独立のこと黙ってたのは、その指輪を渡す時に言うんだって……ずっと心に決めてたからなんだ。『今まで以上に仕事が忙しくなるけど、これから先もずっと、俺のこと支えて欲しい』……って」  そんな魔法の言葉は、今までの寂しさや不安、不満、負の感情すべてを一掃するには充分すぎた。 「うそ、本当にっ……?! 私……で、いいの……?!」 「お前以外に誰がいるってんだよ、バカ」  照れ隠しで口が悪くなってしまうのも、いつもの癖。そして綾乃の手の中からパシッとリングケースごとぶん取ると、葵はその手で中身の指輪をつまみ上げた。
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