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☆
あれからもう、4年も経つのか。
俺は舞台袖で小さく咳払いをすると、舞台中央に飾られた金屏風と、その上に書かれている「祝・直木賞受賞」の文字を見つめた。
舞台に差し込むスポットライトは、まるであの夏の太陽みたいだ。
俺がそんなことを考えていると、「みつる、あの時の勝負は引き分けか?」と隣から声がした。
俺は「まさか俺とお前が、同時受賞だなんてな」と苦笑いした。すると会場の方から、司会者の声が聞こえてきた。
「それではお時間になりましたので、ご案内いたします。第〇回直木賞受賞者のご登壇です。太田みつるさん、そして河井タクマさん。どうぞ!」
俺は右腕を伸ばすと、拳を隣にいるタクマに向けた。タクマも左腕を伸ばしてきて、俺たちは拳と拳を突き合わせた。俺はタクマを見つめると、にっと笑った。
「でもよ、まだ勝負は終わってねぇ。俺たちの戦いは、これからだ!」
するとタクマも、不敵な笑みを浮かべた。
「望むところさ。まあ、勝つのは僕だけどね!」
そして俺とタクマは、二人並んで、輝く舞台の中央へと足を踏み出した。
(了)
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