才能泥棒

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前回の講評会から2か月が経った、6月。 じめじめとした湿気が漂う放課後、俺たち3人は図書室に集まっていた。俺は鞄の中から原稿用紙の束を取り出すと、どんと中央の机に置いた。今日のために書きあげた、俺の自信作だ。 前回の講評会での屈辱を乗り越え、その後も俺は小説を書き続けた。うまく書けないことに悩むこともあったが、それ以上に俺は物語を書く面白さの虜になったのだ。今回こそ絶対に結果を出してやると、俺は両手をぎゅっと握った。 午後5時30分。森先輩の一声で、講評会が始まった。今回の講評会のテーマは「夢」で、原稿用紙20枚までというルールだ。 まず森先輩の小説を手に取った俺は、しばらく読み進めてから首を傾げた。前回の講評会の時の作品と比べると、まったく読みごたえがなかったのだ。内容は誤字脱字ばかりで、そもそも小説として成立していないレベルだった。 これではまるで2カ月前の自分ではないかと、俺はぽかんと口を開けた。 俺は正面に座って黙々と原稿を読んでいるタクマをちらっと見つめた。きっとタクマも俺と同感だったのだろう。タクマは森先輩の小説が書かれた原稿用紙を、手でぐしゃぐしゃに丸めた。そして立ち上がったタクマは、握った原稿用紙を森先輩めがけて勢いよく投げつけた。 図書室にこれまで経験したことのない緊張が走って、俺は肩をびくっと振るわせた。タクマは森先輩をさげすむような目で見つめると、「ふざけないでください!」と叫んだ。 森先輩は頭に当たって床に落ちた原稿用紙を拾うと、傍にあったごみ箱に捨てた。そしてかけていた眼鏡をはずして、深くため息をついた。
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