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蘭丸もいなくなってからオーシャンと2人で少し気まずい空気になる。
「明ちゃんが選んだ新卒の子達は、確かに良い刺激になっているみたいだね。
空気を読むのが上手い人達は多いけど、その空気を動かそうとする人達はなかなかいない会社だったから。」
「同じように良い人達なんだよね。」
「みんなが動いてくれないと、この大きな体を持つ生き物は動きが鈍くなるからね。
命懸けで漕がないと進んでいけない。」
「命懸けで漕いで・・・進む・・・?」
オーシャンのまた激しすぎる言葉。
その言葉を聞き返すと、オーシャンは真剣な顔であたしを見下ろした。
「大きな海を、どこまでも続く大きな海を渡ってはいけない。」
「大きな海・・・。」
「生きていると穏やかな波ばかりじゃないから。
荒れ狂う波の中を進まないといけない時もあるから。
真っ黒で何も見えなくても・・・進んでいかないといけないから。
だから、命懸けでなんだよ。
命を懸けてじゃないと、大きな海は渡っていけない。」
そう言いながら・・・
オーシャンは空気を纏っていく・・・。
激しい・・・
激しすぎるくらいの・・・
大きな・・・
大きな・・・
なんだか、それが・・・
広がっていっていくような・・・。
それを感じていた時・・・
音が、聞こえた・・・。
ザワザワとしていた音の中でも聞こえたのは、だんだんと会場が静かになってきているからだと分かった・・・。
それが分かった時、空気を感じた・・・。
ピンっと張り詰めたような空気が・・・。
その空気の中、規則正しい音と一緒に現れた・・・。
現れた・・・。
会場中の視線も空気も全てを集めて・・・
“女王様”が・・・
“女王様”が、現れた・・・。
シャンパンゴールドの煌めくロングドレスを身に纏い・・・
同じような色のピンヒールを履いた“女王様”・・・。
その姿は“女王様”というよりは・・・
“女王様”というよりは・・・
“王”という空気で・・・。
でも、あまりにも美しいから・・・
“王”ではなくて・・・
“女帝”だった・・・。
“女帝”・・・だった・・・。
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