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オーシャンと2人でいた時はチラチラと見られていたけど、今は全員が“女帝”を見ている。
それくらいに“女帝”は絶大な人気がある。
“経理部の女王様”、結城麻美さん。
麻美さんが税理士試験5科目に合格し、その後は外部で実務経験を積んでいた。
産休と育休も少し終えてから復帰となった。
あの男の本社をなくし支社を本社にし、“女王様”の戻る先とした。
そして、“女王様”から“女帝”になったのだと思った。
そんなことを思いながらオーシャンと並んでいたら、司会の男の人がメインイベントである“女帝”の新会社の決起会へと進めていく。
司会の男の人に呼ばれ出てきたのは藤岡副社長だった。
社長ではなくて、藤岡副社長。
最近何かと藤岡副社長が表に出てくることが増えてきている。
その副社長がマイクを持って喋ると・・・
女性社員達から歓声が上がってしまう。
それくらい藤岡副社長は見た目も良い男で。
でも・・・
藤岡副社長が重すぎる空気を出したので、その歓声も止んだ。
「この度、我が社の新しい柱である新会社に結城麻美社長が就任しました。
あちらも“結城”なので“麻美社長”と呼びます。
麻美社長、壇上へ。」
藤岡副社長がそう言うと・・・
静まり返った会場に規則正しい音が響く・・・。
シャンパンゴールドのロングドレス、綺麗な黒髪はアップにされ・・・美しく歩く。
あたしは、泣いてしまった・・・。
似ていたから。
その美しすぎる姿が“アヤメ”になんとなく似ていたから。
もう二度と会うことは出来ない“アヤメ”。
真っ赤な“紅葉”ではなく、真っ白な“アヤメ”に。
「明ちゃん・・・?」
オーシャンが思わず“明ちゃん”と言ってしまうくらい、あたしの様子は変なのかもしれない。
なんだか・・・
なんだか・・・
この会場の空気が複雑に交わり始めた。
「剛士は・・・?」
なんだか不安になって、剛士を探してしまう。
「剛士君・・・そういえば、いなくなったね。」
「剛士・・・大丈夫かな。」
「剛士君?」
「藤岡副社長は剛士の友達なの。
でも、友達だからこそ・・・剛士を結構荒く利用もする。」
剛士があの男から性的虐待をされていたこが社内にバレてしまったのも、藤岡副社長が計画していた。
その後に全ては綺麗に収まるのだけど、藤岡副社長はそういうことも出来てしまう人だった。
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