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「こんな嘘・・・大丈夫なんですか・・・?」 あたしは小声で隣にいる秘書に話し掛ける。 秘書の男性は優しい笑顔で笑いながら壇上を見ている。 「“本当”にすればいいだけなので、木葉さんは何も心配しないでください。」 「そんな危険なこと・・・。 バレたらこの会社だってどうなるか分からないのに・・・。」 「副社長の“ご友人”なので。」 「剛士が・・・?」 「はい。」 「あたしもオーシャンも藤岡副社長の友達じゃないのに・・・。」 あたしがそう言いながら泣くと・・・ 秘書の男性がハンカチを渡してくれた。 「友達の友達は、友達らしいですから。 剛士君がそう言っていました。」 「それは・・・それは、分かる・・・。」 秘書の男性から受け取ったハンカチで涙を拭いていく。 そしたら、そのタイミングで・・・ 『明。』 と・・・。 今度は“女帝”があたしの名前を呼んだ。 それには驚きすぎていると・・・ “女帝”が・・・ 妖しい笑顔ではなくて優しい笑顔で壇上からあたしを見ている・・・。 そして・・・ 『7歳からの“男”としての長年の勤務、お疲れ様。』 そんなことを言われた・・・。 そんなことを言ってくれた・・・。 『女の子なのに“男”として天野を守り続け、女性なのに“ゲイ”になってでも真坂部長を支え続けた。 明の存在がなければ今の私はいない。 本当にありがとう。』 そう言って・・・ そう言って・・・ 深く深く・・・ 美しくお辞儀をした・・・。 そしたら・・・ “女帝”の両隣に立っていた剛士と・・・オーシャンも、深く深くお辞儀をして・・・ 涙腺は崩壊した・・・。 崩壊して・・・ 涙が止まらなくて・・・ 「明・・・。」 急に周りに気配を感じた。 見てみると女の子達で・・・。 あたしと一緒に海に行ってくれた女の子達で・・・。 その女の子達が優しい笑顔であたしの周りに来て・・・優しく抱き締めてくれた。 「やっぱり、あの時に深い青の水着を選んで正解だった。」 そんなことを言われ驚いていると・・・ 「明があんなに“女の子”の顔で誰かの隣に座ってるところ初めて見たからね? 1人じゃ踏み出せないと思ってうちらも一緒に真坂部長にいく感じにしてみた!!」 「よかった、真坂部長がゲイとか言い出してどうしようかと思ってたの。 明ちゃんも男だったからゲイって誤魔化してたのかな!?」 「あんなに明にベッタリでゲイだって言われてもね。 前の明だったら分かるけど、完全に女になってる明に対してあんなにベッタリされてもね。」 女の子達のそんな会話を聞きながらあたしは笑ってしまった。 泣きながら笑いながら、女の子達を見る・・・。 「柚、亜里沙、三崎さん、ありがとう。」 「・・・え、なんで私だけ名字!?」 「名前呼ばれてる度に嫉妬した空気出してる人物がいるから止めておく!!」 あたしがそう言って明るく楽しく笑うと、柚も亜里沙も三崎さんも嬉しそうに笑っていた。 ザワザワとしてきた会場。 そんな中、オーシャンの声が。 オーシャンがマイクを持っている。 何を言うのかと思ったら・・・ 「私事ですが、この場をお借りしてお話したいことがございます。」 あたしとのことかと思って心臓がバクバクとしたら・・・ オーシャンが・・・ オーシャンが・・・ まさかの・・・ 「僕の名前はオーシャンですので。 大きな海と書いてオーシャン。 ひろみではなく、オーシャンです。」 そんなオーシャンの話に・・・ 会場中の空気が大きく揺れて・・・ 混ざって・・・ かき混ぜられて・・・ さっきまでの話より、“オーシャン”が“オーシャン”だったことに、社員達の意識が大きく向いた・・・。
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