ある地球の未来

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ある地球の未来

「平和」など所詮は綺麗ごと、力が拮抗しあう同士が無難に生き残るための手段でしかない。 私は「世界獣人記」の著者にして語り手の者だ。君に地球の未来を教えてしんぜよう。 西暦4999年、人類は進化のベクトルの舵を斜め上に切っていた。 空飛ぶ車も、超ハイテクスマホも、どんな病気も一瞬で治せる薬も、存在しない! 進化の軌道は右肩上がりでは無い、放物線だったのだ。 話し合う事で分かりあい共に歩む? 否!この世は弱肉強食!強い者が正しい、弱い者が悪! 超原始的思想に則り人類の英知は「獣人化」の一点に注ぎ込まれたのだ。 「おい」 とある男が通りかかった夫婦に声を掛けた。 「なんだ?」 夫が返答する。 「貴様の連れ、なかなかの美人だ。俺がもらってやろう」 「ふざけるな」 この世界に話し合いは無い、思想が違えた時は闘うしかない。 対峙した男たちは、双方ともみるみるうちに姿を変えていく。 「俺は狼と同化した狼人間だ!貴様の喉笛を掻っ切ってやる!」 二足歩行の犬みたいな姿になる男。 「俺は鳩と同化した鳩人間だ。鳩胸に押しつぶされるがいい!」 首から上は鳩、そしてやたら胸板の厚いボディになる男。 「死ね!ウルフファング!」 「くらえ!鳩胸プレス!!」 シャキーーーン!交差する二人の男、勝負は一瞬だった。 狼人間の牙が鳩人間の首元に突き刺さっていたのだ。 「クルックーーーー!!」 「あなたーーーー!!」 ブシャアア!と首元から鮮血を放出、妻の悲鳴を聞きながら鳩人間の命は潰えた。 「女、俺が勝者だ。今日から貴様は俺の妻だ」 「はい、私は貴方の妻です」 あっさりと受け入れる女、しかしこの世界ではこれが常識なのだ。 そんな獣人化する者たちが住まう世界を記した「世界獣人記」。 もうすこしページをめくるとしようか。
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