頬に落ちる、透明な君

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「じゃあさ夏向くん!明後日、久しぶりに外で遊んでみない?一緒に!」 「……はい…!?」 彼女の突然の提案に、俺は頬張っていた卵焼きを吹き出しそうになった。 「夏向くんも私も、一人じゃ外に出ないでしょ?でも、二人一緒なら引きこもりぼっちを辞められるんじゃないかなーと思って!」 「いや…別に俺、引きこもり辞めたくはないですし…」 「私と遊ぶよりも家でゲームしてたいってこと?」 「…いや…そういう訳では…」 「じゃあ決定!女の子からのデートの誘いを断るなんて野暮なことしないでね?」 「デっ!!!?ゴホッグホッ…」 「あー、大丈夫?ほら、落ち着いて」 優しく宥めるように俺の背中を擦る鳴美さんの手が、ひやりと冷たかったのを覚えている。 耳元から聞こえてくる鈴の音のような美しい声とそれに混じる微かな吐息。 数cmの距離から伝わる体温は確かに温もりを含んでいるのに、俺の背中に触れた手だけが、何故か冷たかった。 しかし、キモオタ陰キャの俺は女子からの人生初のボディタッチに舞い上がっていて、そんな感想はすぐに忘れてしまっていた。 とにかくこうしてまた訳の分からぬうちに、俺は鳴美さんのペースに巻き込まれて気がついたら日曜日にデートの約束をしていたのだった。
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