頬に落ちる、透明な君

6/19

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
俺が後にした中庭の方を振り返ることは絶対にしなかった。 俺はひたすら中庭に背を向け廊下を走り、教室までの階段を駆け上がった。 教室に辿り着いてからも、不思議とあの刺すような目が背中に張り付いているような気がした。 授業が始まっても、何も頭に入らない。 "かきざきなるみ"… 俺はそんな生徒を知らないし、名前も聞いたことはない。 そもそも陰キャの俺は友達すらいないのに、女子の名前と顔なんて一致している訳もない。 同じ学年なのか、そうじゃないのか…。 それすらも分からずに、彼女が俺に声をかけた意図ばかり考えてしまっていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加