頬に落ちる、透明な君

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「夏向くん。私の名前、覚えてる?」 「はい……カキザキさん…カキザキナルミさん…」 「漢字はね、美しく鳴くって書いて鳴美なの。珍しいでしょ?」 「……はい」 「夏向くんは、今2年生だよね。私は3年生。突然絡んで驚かせちゃってごめんね。」 「…はい」 ここから更に3往復ほど、彼女と俺の会話(?)が続いた。 何を言っても「…はい」しか言わない俺に、何故か鳴美さんは変な顔せずにずっと話しかけ続けている。 「私ね、実は友達いないんだぁ。」 あっけらかんとして言う彼女の言葉に、俺は驚くあまり「…はい」とすら言えずに口を開けて黙ってしまった。 「だからね、友達のいない夏向くんが毎日ここでぼっち飯してるのが羨ましかったの。」 「…友達いないのバレてるんすね…」 「当たり前!私もホントはここで食べたいんだけど、一人でここにくるのも勇気がいるからさ」 「…そうですかね…?」 「そうだよ!だからずっと、夏向くんはぼっちであることを誇りに思ってるのかなって」 「ぼっちは誇りじゃないですよ。てか誇りたくないです」 「じゃあさ、明日からは私とここで食べよ?」 「…はい?」 「はい決定!明日からは私もお弁当持ってくるからね〜」 こうして俺のぼっち聖地は、突如彼女と分け合うことになってしまった。
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