頬に落ちる、透明な君

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次の日もその次の日も、彼女は本当に弁当を持って中庭に来た。 俺もはじめこそほとんど話せなかったが、次第に少しずつ話せるようになってきていた。 彼女のような美しい人が、何故俺みたいな陰キャ眼鏡と同じくぼっちなのかは未だに分からないが、彼女はそういう話を一切しないでずっと明るく笑っていた。 彼女と出会ってから5日目。 普段なら無駄に長く感じる平日が、今週はあっという間に終わったような気がした。 「…鳴美さんは…土日に何してるんですか?」 俺の質問に鳴美さんは可愛らしいクマが描かれた所謂"キャラ弁"を突く箸を止めて、少し考える素振りをした。 「そうだなあ…やっぱりインドア派だから、1日中家で本を読んだりしてるかな。夏向くんは?」 「俺も同じです。家でゲームか漫画ばっか読んでますよ。」 「夏向くん、昔からそういう子だったの?」 「いや…昔は比較的外で遊んでましたよ。特に夏休み中なんて、毎日のように友達と野球したりプールに行ったりしてました。」 我ながら、なぜそんな少年の末路がこんなことになっているのか分からない。不思議な人生だと改めて思う。
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