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午後10時。
古い家が並ぶ中にポツンと「OPEN」という看板を掲げた家がある。
周りの家の電気が消えているにも関わらず、暖かい灯りが点っている家が1つある。
黒の長い髪をなびかせた少女が1人。
分厚いなにかの本を読んでいる。
外からでもわかるその様子に18歳の少年は引きずり込まれるように店内に入った。
カランと扉を開ける音に気づいた少女が振り向いた。
見るからに自分よりも幼そうな顔立ちの少女だった。
「いらっしゃいませ。恩田様。」
その少年は、自分の名前を呼ばれたことに対して驚いた。
自分はいつ名乗っただろうか、と
「恩田様。何かご相談したいことでもおありですか?」
丁寧な口調だが、声はやはり幼かった。
少女の質問に対して、少年は答えた。
「…相談、ですか?」
少女はキョトンとした表情で聞き返した。
「はい。ご相談がおありだからご来店されたのではないんですか?」
何か、自分以外に問いかけているような話し方だった。
「どんな些細な事でもどんな大きなことでもよろしいのです。自分の過去を変えたい、未来を変えたい。嫌いな人を消して欲しいなどでも構いません。」
何を言っているのか分からなかった。
考えていることに気づいたのだろうか。
少女は呼びかけるように言った。
「別に今日でなくともよろしいのですよ。ここは、お客様のご希望に添えるようなことをしております。たとえ、どんな事でも…」
「本日は閉店の時間となりました。また、明日のご来店をお待ちしております。」
外に出て、ポケットからスマホを取り出した。
時間をみると午後11時。
店に入って、1時間が立っていた。
振り返ってみれば、「CLOSE」の文字があった。
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