【赤】1話 

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 あー。思い出してきたらまた苛ついてきた。 「京」 そんな私に気づいたのか日菜さんに後ろから抱きしめられる。日菜さんの身長は169で私は160。抱きしめられるといい感じに収まるからだろうか。何だが安心する。 見上げると触れるだけの優しいキスをされる。「仕事頑張って」と微笑まれ、先ほどの苛立ちがどこかに消えていく。 「ありがとう」 日菜さんとの関係は心地よかった。お互いあまり干渉しないし、面倒な拗れなどなく良好な関係を築いていた。だが関係を持って2年ほど経っても未だに不思議な事がある。こんなに顔もよく性格も良いのに何故彼女に恋人がいないのか。 わたしたちの関係が終わる時は〝恋人ができた時〟と決めていたが。まさか2年も日菜さんに恋人ができないとは思わなかった。 出会ったあの日の夜。 抱かれた後「また誘ってもいい?」と言われた。いつもなら一夜限りの関係だったが日菜さんならいいかと思ってしまった。体の相性も良かったし何より顔がタイプ過ぎた。 日菜さんに聞いたことはないが自分と似たような理由で恋人を作らないのかも知れない。 告白され何人かと付き合ったことはある。でも、私がその人たちを好きになる事はなかった。泣かれたし束縛された、もう全てが面倒くさくて恋人を作ることをやめ一夜限りで遊んでばかりいた。 私が恋愛感情を抱いた事があるのは初恋の人だけだった。
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