大泥棒と老執事、悪魔の城から金の王女を盗み出す

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 年をとって引退した大泥棒。  そんじゃあ、のんびりしてやるかと、ぶらぶら気ままに一人旅。  もじゃもじゃの白髭に金貨を隠し、大きな体にビールを毎晩詰め込んだ。  毎日平和で気楽だけれど、なんだか少し退屈だ。  ある時、森の中で迷ってしまい、古いお城にたどり着いた。 「おうい、一晩泊めてくれ」  ギイっと門を開けたのは、暗い目をした痩せっぽっちの老執事。  老執事はため息をついて、小さな声で呟いた。 「やれ、どこかでみた顔だと思えば、悪党も悪党の大泥棒」 「ややや、どっかで会ったかな」 「昔の話。あんたはこの城にも盗みに来たよ」 「へえ、そうだったかよ。すっかり忘れちまったナァ」 「まあ、いい。それよりひとつ、盗みを頼まれちゃくれないか」  そう言うと、老執事は話し始めた。  ここは悪魔に乗っ取られた城  悪魔に奪われた大事なものを取り返しておくれ  ひとつ目は、金の皿、なんでもほしいものが食べられる  ふたつ目は、金の冠、だれでも言うことを聞かせられる  みっつ目は、金の王女様、この世のすべてが手に入る  大泥棒は驚いた。真面目が服を着たような老執事が、まさか盗みを頼むとは。  奇妙な依頼に久しぶりに胸が躍って、大泥棒は引退したことなんかすっかり忘れ、二つ返事で引き受けた。
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