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第2話 「屍人」
春樹 灯 (ハルキアカリ)︎︎ ♀
身長 165
体重 48
年齢 17
「普通の女子高生。だったが、鬼に殺された時、酒呑童子の血が体内に入った事で鬼人として復活する。性格は明るく、常に笑顔で、正義感があり優しい。だが、表面上の付き合いがおおかったりと割とドライ。」
轟 健吾 (トドロキケンゴ)♂
身長 175
体重 62
年齢17
「霊術に長けた祓魔師。上司である伊崎の事を尊敬し、彼に憧れている。性格は、一言で言うと「狼」。短く深くの交友関係で、数少ない友人や自分の周りにいる人達に対して執着しており、それ以外や他者に関してはとても冷たい。」
伊崎 紫苑 (イザキシオン)♂
身長 190
体重 75
年齢 20
「自称「神様」の祓魔師。性格はおちゃらけており、適当で常に余裕綽々。表には出さないが誰よりも責任感が強く、その余裕のある態度はある意味、彼の責任感の強さの現れである。」
酒呑童子 (シュテンドウジ)♂︎︎ ♀
身長 165
体重 48
年齢 不明
「廃校舎の地下にある祭壇に封印されてた「鬼」傍若無人で唯我独尊。平安時代に存在した伝説の盗賊であり、妖怪。その圧倒的強さから、日本三大妖怪に数えられ、弱肉強食、勝者絶対主義の持ち主。嬉しければ殺し、悲しければ殺し、怒れば殺し、楽しければ殺す。」
若月 昴 (ワカツキ スバル)♂
身長 182
体重 72
年齢 20
「皇隊と言われる、天皇陛下を護衛する精鋭の祓魔師。祓魔師の中で、現人神に匹敵するほどの実力。神が宿った肉体と言われるほどの身体能力。」
酒呑童子「起きたか小娘。」
春樹「……だ、誰!?って、えぇ!?私ィ!?」
酒呑童子「騒がしい。貴様の身体で受肉したのだ。貴様に姿形が似るのは当然だろ。」
春樹「……貴方が、私の中に眠る化け物……」
酒呑童子「化け物か……元は人間なのだがな?まぁ良い。無理矢理貴様の身体を改造したわけたが、何分貴様の霊力では俺は活動できない。」
春樹「車改造しまくったけど、ガソリン代無くて走らせられないって言う情けないオチ?」
酒呑童子「……まぁ事実だ。とりあえず死ね。」
N(酒呑童子が言葉でそう言うと、春樹の首が1周する。)
春樹「ッ!?はぁ……はぁ……」
酒呑童子「我は嬉しくなれば殺すし、悲しければ殺す、怒っても殺す、楽しくても殺す……あまり我の感情を煽るなよ?」
春樹「…………だけど、ここでいくら殺されても、現実の私には作用しない。ここは私とアンタの精神世界みたいなものでしょ?なら、ビビる必要は無いわね!アンタ名前は?」
酒呑童子「……酒呑童子だ。」
春樹「春樹 灯。よろしく。」
酒呑童子「変わった女だな。本題に入るぞ?貴様の寿命は残り2日だ。期間内に霊力を取り込まないと死ぬ。ここで問題なのが、貴様が死ねば我も死ぬと言うわけだ。」
春樹「協力してくれるってわけ?」
酒呑童子「いや、寿命が足りない。我が貴様の変わりに活動した瞬間、1分ごとに1週間分の寿命が減る。」
春樹「タバコよりも害悪ねアンタ。」
酒呑童子「だか喜べ。餌は向こうからやってくる。我の血に魅入られ人間を食らう家畜共がわんさかわんさか溢れてくる。そんな家畜を捌く料理人が素人では飯も不味い。……そこでだ。ここで我が鍛えてやる。」
春樹「特訓ってやつ?……生きるためなら、何だってやってやるわよ!」
N(現実。)
母「おはようアカリ。
轟「おはようございます。」
春樹「一言いいかな?」
母「どうしたの?」
轟「ウィンナーはやらんぞ?」
春樹「なんで君までご飯食べてんの?」
轟「起こしに来たからな。」
母「轟君、良かったらこの子貰ってあげて?」
春樹「な〜に言ってんのかなァ〜!?」
轟「嫌です。」
春樹「即答かよ!せめて「え……トクゥン/////」みたいな反応しても良かったんじゃない!?」
轟「大人になっても生きてたらな。」
春樹「え……トクゥン/////」
N(本部にて。)
伊崎「おはよう二人とも。」
轟「おはようございます。」
伊崎「昨日はよく眠れたかい?君は生きてるだけで魔を引き寄せる。昨日は特に問題はなかったようだね。だけど、これからは寝る前に東西南北に盛り塩と札を置くこと。OK?」
春樹「は、はい。」
伊崎「健吾。報告よろしく。」
轟「はい。今日は8時から17時まで千代田区周辺の見回りと討伐。その後は、新宿歌舞伎町で浄の案件が4件です。」
伊崎「分かった。帰ったら、春樹ちゃんの才能を見てみようか。」
春樹「あれ?私、学校は?」
伊崎「君、通わせられる状態じゃないんだよ?上層部は魔の血を取り込んだ君の事をよく思ってない。そして何より、死者が出た以上、隠蔽する必要がある。それまで時間がかかるから、君は僕の管轄下で頑張って貰うよ。」
春樹「私に決定権は無いのね……」
伊崎「ほら行った行った!」
轟「はいッ!」
N(千代田区 付近にて。)
春樹「お〜……これが学校をサボる感覚ってやつねぇ〜?」
轟「どうした?」
春樹「平日の真昼間から都内を練り歩くって中々無いじゃん?なんか新しい感じして面白いな〜て。」
轟「そうか?まぁ俺からしたら学校に行くってのが無かったから、お前のその感覚はよく分からない。」
春樹「学校行ってないの?」
轟「小学校の前半は行った。高学年に上がってからいかなくなった。」
春樹「ブラックだねぇ……義務教育の義務とはどこぞにいったんじゃい……」
轟「だが、俺らがいなければその当たり前にすら怯えないといけない。俺の義務と言うのは戦う事だ。今すれ違った人達の日常を守るためなら、俺達はどんな不条理も黙って受け入れるさ。」
春樹「自己犠牲の語りまかよ。……轟君、人間味ないよね?」
轟「もはや人間じゃないお前に言われたくないな。」
N(2人はクレープを食べた後、とある路地裏に入った。)
轟「お前に教えてやる。悪霊と言うのは決まった時間にしか現れない。そして活動できるのは約1時間程度。現場に出遅れたりしたらその分被害が増すと言うわけだ。」
春樹「なんでそれを私に言うのよ……」
轟「寝坊助さんだからだ。」
春樹「私の睡眠が人類を超越してるだけだよ。」
轟「来るぞ。」
春樹「修行の成果、見せてあげる!」
N(辺りに鐘の音が鳴る。時刻は12時30分。この世から隔絶された空間となった裏路地に、ハイヒールの音が聞こえてくる。)
轟「ハイヒール?」
口裂け女「アタシ……キレイ?」
轟「来るぞ!構えろ!」
口裂け女「き〜れ〜ィィ!?」
若月「堪忍な?タイプやないねん。」
N(覆い被さるように影がやって来る。空から舞い降りた黒い影は、二双の白刃で怪異を切り裂いた。)
若月「でも、えろお可愛いで?」
N(流行りのキュンですポーズを作って、悪霊を祓った。)
若月「君ら、千代田区の管轄はどこか分かってやってるんけ?おうコラ。」
轟「管轄も何も関係無い。俺達は上からの命令でこの任務に当たっていただけだ。」
若月「せやねぇ。俺やったからええけど、他の奴さんやったら喧嘩になってたで?それよか、君、例の女の子やろ?バリ可愛えなァ〜?」
春樹「あ、ど、どうも……」
若月「名前なんて言うん?俺、若月 昴。」
春樹「は、春樹 灯です……」
若月「ええ名前やねぇ……墓石にちゃんと刻んだるわ。」
春樹「ッ!?」
N(ツ〜と、頬から血が垂れる。フランクで優しそうな表情から覗くその眼光は、明確な殺意を持っていた。)
轟「下がれ!」
若月「エグい反射神経やな。轟君やったら死んでるで?ホンマに人間やないっちゅ〜のは分かったわ。……尚更生かしておくのはアカンやろ?」
轟「一旦体制を立て直す!」
N(春樹は轟を抱えて飛んだ。地面にヒビができるほどの踏み込みは、彼女が明らかに人間を超越した肉体と言うを知らしめた。)
轟「早っ!?」
春樹「どうしよう……不思議と怖くないんだよね……今なら、自分の思い描いた事なんでもできるかも!」
N(昨日深夜)
伊崎「健吾はどう思う?」
轟「何がですか?」
伊崎「アカリについてだよ。」
轟「……危険、ただそれだけです。」
伊崎「そうだね。圧倒的な力を手に入れたものは、その力の振るい方を知る必要がある。健吾がそれを教えてあげないと。」
轟「そこまでする必要があるんですか?」
伊崎「あるよ。健吾は、誰に霊術を教えて貰った?」
轟「……伊崎さんです。」
伊崎「そうでしょ?僕も、先代にこの力をの使い方を教えて貰った。僕が付きっきりで彼女の面倒を見れるわけじゃない。これからはバディとして、先輩として、君が教えないといけないんだよ。」
N(現在。)
轟「アカリ!追ってきてるぞ!」
春樹「嘘っ!?」
轟「後20メートル行った先に廃ビルがある!そこなら一般の被害は最小限に抑えられる!」
春樹「分かった!」
酒呑童子(つまらんな……せっかく力の使い方を教えても、子奴ではな……ふむ、どうしようか?我の器足る小娘が、このまま王道を歩むのはつまらん。)
N(廃ビルにて。)
春樹「よっと!どうやる?なんか今はすんごい力が有り余ってしょうがないよ!」
轟「とりあえず降ろせ……女にお姫様抱っこされたままじゃ流石に恥ずかしい。」
春樹「ごめん!そ、そんなつもりは!」
轟「気にするな。」
若月「おいゴラァ……こちとら喫煙者やぞ?走らせんなこのアホンダラァ……ぜぇ……ぜぇ……」
轟「なんでコイツを狙う?」
若月「こちとら皇隊やぞ?千代田区は何があるか知ってるんけ?皇居や。御国の天神たる天皇陛下や皇后陛下が在らせられる場所や。神聖なあの地に踏み入れる魔は俺達が祓う。」
春樹「皇隊って何?」
轟「祓魔師の中でも選りすぐりの精鋭達を集めた天皇家直属の護衛隊だ。天皇家と言うのは、この国の神主のような存在。日本の象徴を守護する奴らってわけだ。まず俺1人じゃ相手にならない。」
春樹「君一人?……今は、2人でしょうが!」
轟「原因はお前だがな?」
春樹「しょうがないでしょ?アタシの中の鬼さん、皆から嫌われてんだから。」
轟「俺も嫌いだ。」
若月「御託はそろそろええやろ?轟君には邪魔せんといて欲しいんやけどなァ〜?それでもアカン言うんやったら、墓石が2つここに立つぞ!」
N(一瞬にして2人の間合いに若月は入った。横に一閃、光が走る。)
轟「霊壁ッ!」
N(しかし刃は、轟の術によって止められる。)
春樹「大阪にッ!帰れ!」
N(ズドンッ!!!!重たい衝撃が若月の腹部に走る。)
若月「ガハッ!?…………ウプ……オ゛ォ゛ォ゛ぇッ!?…………化け物やろクソボケが……ァ゛ァ゛ン!?……プッツンいったぞカスが……シバキ倒したるわ……」
N(吐瀉物を撒き散らしながら、若月はフラフラと立った。)
若月「悪鬼百妖人にならず。天の皇の守護者となりて、我、その伝承を顕現する。真章開幕「炬・焔人」
N(辺りの空気が揺れる。彼の周りにある空気が陽炎になるほど、霊力とは違うまったく別の物。闘気とでも言うのだろうか。純粋な強さだけで、魔と相対する。)
轟(消えた?)
若月「こっちや。」
春樹「ゴハッ!?」
N(春樹が若月に入れたボディーブロー。それをそのまま春樹に返す。春樹が吹き飛び、まるで瞬間移動したかのように轟の視線から消えると、突然目の前に現れ、拳を放つ。)
轟「霊壁(レイヘキ)ッ!」
N(霊力で作った壁はいとも簡単に破壊され、そして強き拳は轟を捉えた。)
酒呑童子(コイツ、霊力で身体能力を強化したのでは無いな……逆か。圧倒的な身体能力を制限する為の呪いがかかっていたのか……小娘には、無理だ。……おい小娘、変われ。)
春樹(うるさい……師匠ずらするなら良いけど、少しは自分で成長させてよ。……今、結構楽しいから。)
N(若月の拳は、轟の顔面を捉える事なく、壁にめり込み、そして遅れて風圧でズドンとさらに深く衝撃を与え、壁は粉々に崩れ落ちる。)
春樹「1回やって見たかったんだよね。……若月 昴!私と、タイマン晴れやこんにゃろ〜!」
若月「にししッ!ええなァ!ほなやろかァ!」
轟「おい!」
春樹「大丈夫!……言ったでしょ?なんでもできるって……溢れて来るんだよね力が。」
N(拳を握る春樹の腕から、異常なまでに血管が浮き出る。寿命残り2日の春樹が、何故ここまでで強くなったか。酒呑童子の血は、魔を引き寄せる性質を持つ。若月が登場した時、悪霊を祓った。その悪霊の霊力は、春樹に吸収されたのだ。その霊力量およそ寿命1年分。口裂け女と言う古くから存在する悪霊だからこそ、それほどの霊力を得られたのだ。だが、そんな悪霊を一撃で屠れる若月。そして最強の鬼の身体を手に入れた春樹。2人は正面で睨み合う。)
若月「チェストォォォッ!!!!」
春樹「オラァッ!!!」
N(まるで不良漫画の名シーンの再現。拳と拳が重なり、お互いの顔に同時に拳がめり込む。そして轟が瞬きをする前に2人は目の前から消え、廃ビルの中には爆発音のような怒号が鳴り響く。)
轟「被害がヤバい……現の世が幻か。幻が現と成りて影に導く。「影開・裏世界ッ!」
N(轟にできること。それは周囲の被害を最小限に抑える事。印を結び、霊術を唱えて結界を作ることで、この廃ビル一帯を別空間として扱わせる。……いわば、それしかできない。)
轟(本当に良いのか?これで?間違ってはいない。だが、俺自身がこれで良いのか?……言いわけないだろ!折れたらそこで終いじゃねぇか!)
N(高速で動き周り、殴り合う2人。そんな2人に割って入ろうと轟は屋上から飛び降り、印を結ぶ。自分の霊術の中で最大火力の大技を。)
轟「俺だけ除け者にするんじゃねぇ!寂しいだろうが!!」
春樹「ちょッ!?」
若月「ア゛ァ゛ン!?」
轟「八岐ノ深淵・尾の輝は一刀となりて薙る。千切・楴・玉神・榊斬・剣の大蛇!」
N(詠唱を終えると、建物を覆い尽くすほどの魔法陣が現れる。魔法陣から顔を出したのは、剣の先端。まるで隕石かのように、剣は建物に突き刺さり真っ二つとなる。)
轟「どうだ見たかッ……俺だってやれるッ……やったんだ!」
N(剣は消え、真っ二つになって倒壊する建物の中、瓦礫を伝って2人はまだ戦っていた。もはや、轟の事は眼中になかった。)
春樹(凄い……私って凄い!精神世界で、殺されなながら戦い方を教わった。殴り方、蹴り方、避け方、受け方……今の私は、唯我独尊モードに入ってる!)
若月(噂には聞いてたけど、ホンマに女子高生け?この子。……まるで死戦をくぐり抜けた猛者や。……せやけど、俺と正面切って殴り会えるのは中々おらんわ……7割だけ、本気出したる。)
春樹「ッ!?」
N(春樹は落ちる瓦礫に背をつけた。先程まではちゃんと捉えられていたのが、まるで消えたかのように音もなく姿が消えた。)
若月「よう目ガン開いてみとけ。ビッくらポンやぞ?」
N(若月の拳を食らった時、春樹は一発目をガードする。だが、その上に から再び衝撃が走り2度殴れる。一撃で2度のダメージを与える。)
若月(武皇・残風拳。)
N(春樹ですら捉えられないスピードで、何度も何度も拳を食らう。圧倒的連打。最速のラッシュ。)
春樹「グァァァァッ!!くっ………カハッ……」
若月「……流石に、鬼でもついて来れへんかったか。俺に勝てる奴おるんやったら探して来いよ。この時代じゃ無理やな。」
酒呑童子「そうかそうか……この時代では無理か。なら、平安ならどうだ?」
若月「……大物発見。」
N(春樹が意識を失った事により、肉体の主導権は酒呑童子に写った。そして、寿命には余裕がある。5分限りの「酒呑童子完全復活」)
伊崎(……酒呑童子が完全に顕現したか。……だけど、それは吸収した霊力を触媒にしてるから、持って5分って所か。)
轟「うっ……クソ……ッ!?い、伊崎さん!?どうしてここに!?」
伊崎「やっほ〜健吾。それより、久々に大技使ったね。どうだった?」
轟「……分かりません。」
伊崎「珍しく熱くなってたじゃないか。どうした〜?」
轟「分かりません……」
伊崎「分かるよ。才能とか、強さとか、自分の届かないものを目の前にすると、皆ムキになる。それがダメな事とは言わないよ。向上心があるからこそ、そう思うんだ。今のままで満足したくない、そう思うから、アカリに嫉妬してるんでしょ?可愛い所あるよね健吾も。」
轟「俺、弱いですか?」
伊崎「弱いよ。」
轟「酷い。」
伊崎「嘘はつかないからね僕。でも、強くなれる。人と言うのは、強さだけでは賞賛されない。力を得るにはそれ相応の重荷と責任がのしかかる。賞賛される強さが欲しいのかい?単純な強さが欲しいのかい?何の強さかは人それぞれだ。だからこそ、正しい強さを見つけなさいよ。」
轟「はい……頑張ります。」
伊崎「さてと、決着はどうなったかな〜?どいつもこいつもイキリ過ぎじゃない?どう思う健吾?」
轟「……伊崎さんも、中々プライド高いですよね。」
伊崎「当たり前でしょ?平安で最強なのか、皇で最強なのか、そんな区分した言葉を使ってる時点で、神には及ばない。ちょっと史上最強証明してきます。QED?」
轟「QED、です。」
N(5分前。)
酒呑童子「さて、始めるか。貴様、小娘との戦闘を見たぞ?中々面白い技を使うな。一度の打撃に2度の攻撃を与えた。……分身と言うよりは、風圧と残像により質量を持った攻撃か……」
若月「お?そうなんけ?ちとエンジン入れたら2回ズコバコしとったわ。ま、知らんけど!」
酒呑童子「ケヒャヒャヒャッ!貴様面白いな。……殺したくなってきた。」
N(酒呑童子の背後から何かが形を形成していく。溢れるばかりの霊力が、塊となって鬼の姿となる。黒い鬼。その化身は、平安の時の酒呑童子。)
若月「お〜!バリごついやん。こ〜わッ!チビりそうやわ……なんて言うと思ったけ老いぼれが。古臭いんじゃゴミカスが!去ね!もっかい墓石立ててやるからそこに埋めてやらァ……」
酒呑童子「なんだ貴様ァ……誰に向かって口を聞いている?5分間楽しんでやろうと思ったのに、気分を害した。5分もかけん。貴様は速やかに殺してやる。」
若月「ジジイがぐだぐだ喋んな。はよやんぞ。最短距離で土にうめたる。」
N(若月は腰にかけた二双の刀を抜いた。右手に持つ一本は、剣先がかけて、短刀になっていた。)
若月「俺に従え。獣達。暴れんぞ……若月 昴。いざ舞い踊る!」
N(踏み込んだ地面が捲れ、砂埃が舞い酒呑童子に襲いかかる。)
酒呑童子「フン。」
N(酒呑童子は手で手刀を作り振るう。すると、背後の化身が大太刀を振り下ろす。)
若月「……以外と軽いな。」
N(まるで岩が空から振ってきたような重さ。だが若月は片手でそれを受け止めた。)
酒呑童子「減らず口を叩けるのか……楽しくなってきたなァ!」
若月「開け。両翼・朱雀鳥ッ!」
N(若月の身体から炎が溢れていく。炎をその身に纏い、彼の背から炎の翼が広げられた。)
若月「踊るぞ!死にたくなるまでイジり倒したるわ!」
N(若月は天に登り、その焔人は酒呑童子に絡みつくように斬りかかる。)
酒呑童子(グッ!?……攻撃を食らっただと?)
若月「天連線……」
N(連続で瞬間移動をしてるのかと勘違いするほどのスピード。現れては消えてを50回ほど繰り返した時……)
酒呑童子「むぅッ!?」
N(斬撃は遅れて酒呑童子の身体を切り刻む。)
酒呑童子(これは困ったな……実力だけで言えば、現人神と同じ……伊崎 紫苑と同等か……しょうがない。アレをやるか。)
若月(なんやコイツ……何をしようとしてる?……まぁええわ……このまま切り刻んでやる。)
酒呑童子「終幕開演・狂牙刀煌鬼……」
N(途端に空気が重くなる。ズオン……何かが全身に乗りかかり、とてつもないプレッシャーが若月に向けられる。そして若月が斬りかかった刹那、酒呑童子の影が若月を飲み込んだ。)
若月「ッ!?……なんやここ……?」
酒呑童子「大江山の火山内だ。……ここは、我ら童子衆の根城だった。金銀財宝に、最高峰の刀剣、極上の酒……全てがあった。ま、過去の話だ。さぁ死ね。」
若月「アァ゛ッ!?テメェ……ングッ!?…………な、なんじゃゴラァ……」
N(気がつけば若月の背中に槍が突き刺さっていた。そして腹部には刀、足には矢……避けられるはずなのに、何故か当たる。)
酒呑童子「冥土の土産に教えてやる。この空間は俺の霊力で作られたものだ。精密な霊力操作と、圧倒的霊力量を必要とする。霊力で空間を作り出した場合、その術は強制的に当たると言うわけだ。……さて、まだまだ……まだまだ沢山、たっぷり、圧倒的に残っているぞ?」
N(無限の数と思われる武器が、若月を襲う。そして脳天に、剣が刺さった。)
酒呑童子「……つまらんな。」
伊崎「何がつまらないって?酒呑童子。」
酒呑童子「……貴様、何故ここにいる?」
伊崎「そろそろ、交換してくれないかな?悪いけど、君が暴れ回ったせいで、彼女の寿命は残り1週間だ。」
酒呑童子「そうか……なら、後6日分は消費できるというわけか……」
伊崎「話にならないな。喋らなくていいよ。僕が最強だって先に答え解いちゃったからね。聖童、我はそれを歩む者。六道、我はそれの天に立つ者。神道、我はその先にいる者。天道、我はさらにその上を歩む者。……終幕開演・月凜」
N(伊崎は刀を抜いた。そして空に向けて斬る。斬った狭間は口を開いて、そこから酒呑童子の全てを飲み込もうとする。圧倒的引力によって破壊された物質は霊力に変換され、そして座れた霊力は更に霊力と混ざりあった。そしてその膨大な霊力は名刀「三日月宗近」に宿る。)
伊崎「イタズラが過ぎたな。」
酒呑童子「殺してやる!この世の人間全て滅ぼし」
伊崎「(被せ)本当に君は、良く眠る子だね。アカリ。」
春樹「ふぁ〜……アレ?ここどこ?」
N(春樹が目を覚ました瞬間、まるで何事もなかったかのように現実に引き戻されていた。)
伊崎「君と酒呑童子が入れ替わって、大変な事になってたって感じかな?」
春樹「あ〜……本当にごめんなさいうちの子が……」
伊崎「良いよ別に。」
轟「終わったんですか?」
春樹「おぉ〜!おかえり〜!やっほ〜!」
轟「お前、伊崎さんに迷惑かけるなよ。……おい、聞いてるのか?」
春樹「あれ?名前で呼んでくれないの?」
轟「はぁ?」
春樹「お姫様抱っこしてる的、名前で呼んでくれたじゃん。またしてあげよっか〜?」
轟「覚えてない黙れ。」
伊崎「何それ面白そうな事やってたの!?僕も混ぜてよ〜!」
N(皇居内にて。)
若月「いってぇ……スーツボロボロやんけ……次は負けへんで。酒呑童子。」
N(そして同時刻。羽田国際空港にて、とある2人がやって来た。とある「悪魔」を追って。)
~完~
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