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01-02:宝物その2
厨房を出た僕はぐるりとホールの中を見回した。
「あれ、ヴィクターは……」
見慣れたいつものホールの中に、いつもいるであろう人物がいない。
僕と同じホールスタッフのヴィクターだ。
見た目は少年で、話すとクールに見える彼だけど、遠い日に亡くした母のことを今もなお想い続けている。最初の頃こそお互いにぎこちなかったけれど、今では気軽に話し合える存在だ。
そして人造人間という生まれのせいか、僕よりも時間に正確な彼が、この時間に起きていないなんて事はまずないはず。
(もしかして、何かあったんじゃ……)
不安が脳裏をよぎる。
――けれどその不安は一瞬にして解消された。
「うわーっ! ジャガイモが崩れてきた!」
僕の足元から聞こえたヴィクターの声。どうやら地下の貯蔵庫から野菜を取り出すところらしい。
手伝いに行くべきか少し悩んだけれど、ホールの片づけを早く済ませないとアインさんがお弁当を運んできてしまうことを思い出す。
「ヴィクターなら、大丈夫だよね……」
万が一手こずるようなら、お弁当を届けた後で手伝いに行こう。そう決めて僕はホールの掃除に手を付けた。
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