落とし物は拾いましょう

2/9
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 クラスが変われば環境も多少なり変わり、俺はまた学校に通えるようになった。普通の学校生活がどれほど幸せなことか、俺は子どもながら幸せをかみしめていた。  それを壊したのは、床に落ちた消しゴムだった。あれだけ嫌な目にあったのに、条件反射のようについ拾ってしまった。いや、普通隣の子の消しゴムが自分の目の前に転がってくれば拾うだろう。だから拾った。 「いっ、いやぁぁぁ! なんで!? なんで拾うの!?」  その瞬間、隣の子はそう絶叫した。 「マジ信じらんない!?」  その子の友達も一緒になって俺を非難した。  意味が分からない。さっぱり分からないけれど、俺はその日からクラス中の女子から、総無視を食らった。  なんでも、消しゴムに好きな男子の名前を書いて、最後まで使い切れば両想いになれる、なんて占いが女子の間で流行ってるらしいと、同情した男友達が教えてくれた。  ちなみに、隣の女の子は俺の初恋相手だったりするから、俺の精神への破壊力は想像を絶するもので、俺の心は木っ端ミジンコに、さらにはウイルスサイズにまで砕かれた。  そんな対応をするくせに、女子は俺が落ちた鉛筆をそのままにしておくと『優しくない』と非難したりで、落とし物を拾うべきか拾わないべきか、悩み抜いた小学生時代を俺は送った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!