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けれど、目の前で何かが落ちれば目はそれを追ってしまう。俺にぶつかり、謝罪もなくそのまま走り抜けている男のカバンからそれは零れてしまったのだ。しかもそれはひらひらと風に乗ってやってきた。
例えば、目の前にハエが飛べば手で払うだろう? それと同じだと思ってくれ。
俺はつい、それを掴んでしまった。
「……ハンカチ?」
ふんだんにレースをあしらった、男では絶対に持たないような、布。
「わっ、私のです!」
広げると向こう側が透けて見えるパンツ? で、透けて見えた向こう側には、一人の女性と、警察官が二人。
「確保ー!!」
「え? えぇ!?」
俺はあっという間に手を後ろに組まれ、地面にキスする羽目になった。
「窃盗の現行犯で逮捕する!」
しかも、その手には手錠!?
「なななななっ!?」
そのまま俺は下着泥棒として警察まで連れていかれた。勿論濡れ衣だ。だから当然すぐに解放されたのだが、こういった噂はあっという間に流れる。なにせ下着を盗まれた女は同じ大学だったらしく、俺は間違われて『下着泥棒で逮捕』されたにもかかわらず、がぎかっこの中身だけ噂として独り歩きしてしまった。
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