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そんな俺には当然、彼女なんてできるはずもなく、まるで本物の犯罪者のような扱いを受けながら大学生活を送った。
「運がないよな? お前」
事情を知る友人も少なからずいて、そう言いながら笑っていたが、果たしてそうなんだろうか? 俺は『運』がないだけなのか? そもそも、落とし物を拾わなければ俺は『普通』に暮らせるんじゃないだろうか?
そこまで思いつめていたくせに、俺はまた手を伸ばしてしまった。
通勤途中、駅のエスカレーターで俺の目の前に転がってきたペン。
「あ、落とし──」
ましたよ? そう言って落としたサラリーマン風の男に渡すだけだった。なのに、その男は俺と目を合わすことすらなく、逃げるように人をかき分け走り去ってしまった。
「……」
嫌な予感がする。絶対よくない。早く手放すんだ、こんなペン──。
「それ、カメラ付き……?」
「え?」
俺のすぐ上にいるお姉さん、かなり目ざといですね。確かにペンの後ろにレンズらしきものが……。そして、ゆっくりと顔を上げると、お姉さんはスカートで、ちょっと手を伸ばせばそれでその中身を撮れちゃうわけで……。
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