落とし物は拾いましょう

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『福沢諭吉』?  なんだ? この出会いは? 胸が高鳴るのは恋なのか!? 俺はオジ専だったのか!?  いや、違う。そうじゃない。問題はこれをどうするかだ。  上を見上げてみる。うん、交差した道路しかない。車からボストンバッグが落ちた? いやいや、ありえない。それならバイクか? そうか、バイクなら肩ひもの金具なりが壊れて、カーブで落ちた、とかあり得るな。うん、そうか。そうなると普通の落とし物。 「なわけあるか!」 『福沢諭吉』さんらしき人がこっちを見てるんだぞ!? 普通、入ってるか!? いや、入ってない。しかもどう見てもおひとりさまには見えん! 何人だ? 何人いるんだ!? そんな大人数の『福沢諭吉』さんがボストンバッグで運ばれるなんて、一体どんなシチュだっていうんだ!?  拾うか?  俺は辺りを見回した。  仮に本当に落としたとして、上は高速道路。すぐには取りに来れない。俺が拾ったところで、見ている人間はどこにもいない。  もしかしたら、これは今までの不幸をすべて覆せるほどの幸運かもしれない。  数えきれないだけの『福沢諭吉』さん。これだけそばにいれば当分遊んで暮らせるはずだ。そうしてもいいくらい、俺は不幸だったはずだ。  これは神様からの落とし物なんじゃないか!?
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