落とし物は拾いましょう

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落とし物は拾いましょう

 小学生低学年の頃だった。 『落とし物を拾ったら、交番に届けましょう』  そう習った人は多いのではないだろうか? とりあえず、俺はそう教わった。  だから、目の前に落ちていたサイフを拾った。意気揚々とそれを交番に持っていこうと駆け出した瞬間。 「あっ! 俺の財布!? ──このガキ、泥棒かっ!」 「え? えぇ!?」  俺は体格のいいリーマン風のおっさんにいきなり追いかけられた。人間、追いかけられれば逃げるのがサガというものだろう。けれど、そこは小学生低学年。直ぐに捕まって頭を叩かれた。 「本当なら警察に突き出して、親を呼んでだな……」  延々と怒られたが、怖くて俺は泣くことしかできなかった。  それを見ていた同級生がいて、 「ドロボー!」  翌日から俺は学校でそう呼ばれるようになった。しばらく登校拒否になったのは、誰でも簡単に想像できるだろう。
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