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新年度
蓋を開けてみたら、あたしは、高校生の副担任になってた。
今まで見てきた子たちと一緒に高等部に上がる予定でいたのに、産休に入る先生がいて、急遽変更。
あたしでやってけるのかな、って、正直不安はある。
「今年度、3年A組とB組の副担任になりました、坂口美桜です。高等部は初めてなので、知らない人も多いと思いますが…よろしくお願いします」
始業式のあと、クラスに戻って挨拶するとき、高3ってこんなに大人っぽいの?って、びっくり。
さっきからすっごく視線感じてるのはわかってるけど、話を続ける。
「これから、進路調査票と計画表を配ります。書き方についてはこのあとの学年集会で説明されるので、メモを取るとかしてしっかり聞いてください」
例年、100%大学進学する学校だから、進路についてのケアは手厚い。
「うっわ、なんこれ」
「めんどくせー、先輩から聞いてたのってコレか~」
「1,2,3,4,5…こんなに書くの?」
プリントが後ろの席に届くたびに、生徒たちの悲鳴が聞こえてくる。
「はい、みなさん配られましたね、では時間になったら筆記具を持って移動してください」
ちゃんと言えた…と、教壇を降りて教室の隅にいたら
「美桜せんせ」
頭上から、聞き覚えのありすぎる声。
「めっちゃ緊張してるし」
顔を上げると、登村くんの笑顔。
高3生は知らない子がほとんどだから、登村くんの笑顔にほっとした。
「せんせ、一年間よろしく」
「こちらこそ」
「ん」
えっ、登村くんいま、あたしの頭、ぽんって…
状況がつかめなくて、でも誰かに見られてたら、と教室を見回すと、生徒たちは思い思いに過ごしてる。
肝心の登村くんは廊下に出たのか、教室にいない。
「ふ、ぅ…」
学年集会の前に、職員室に戻る。
あれ?登村くん、あたしがいることに驚いてなかった。知ってたのかな…なんで?
ひとりごとが声になりそうになって、慌てて口に手を当てた。
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