応援パワー

1/1
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

応援パワー

「…ん?」 「んだよ、応援してくれんでしょ、パワーちょーだい」 あたしのパワーがどれだけのものなのかな、と思いながら 「ふぁいと、みーくんっ」 て、言ってみた。 すると、登村くんはみるみる真っ赤になって 「それねーよ、ずる」 ぎゅ、って握手したまま、登村くんの手が汗ばんでくる。 「やられたな、やるしかねーじゃん、見てて、みーちゃん」 頬を赤らめた登村くんはニヤってして ぎゅっ、と握手しなおして 「ありがと美桜せんせ。また、パワーちょーだい」 そう言うと、パッ、と手を放す。 「うん、いつでも」 平静を装いながら、あたしはずっとドキドキ…心臓の音が響いてる。 「じゃ、部活行ってくっから、じゃねーか、その前に講習の教室行ってくる」 「うん、がんばれ」 「じゃーね」 手をひらひらさせて、面談室から出ていく登村くんを見送る。 「…ふーっ」 握手を求められたのは、想定外。 真っ赤な登村くんは、ちょっと想定内。 手にはまだ、登村くんの手の感触がしっかりと残ってる。 「はーっ…」 あたしは副担、登村くんは教え子。 教え子の夢に向かって、手伝ってるだけ。 平たく言うと、仕事してるだけ。 そう思うと、あたしの気持ちはしぼんじゃうけど、それでいい、登村くんの夢と目標が叶えば。 「うん」 頭の中で気持ちを整理したところで、面談室の窓を閉め、カーテンをばーっと開けて、部屋の鍵を閉めた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!