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登村くんからのメッセージ
<せんせー、あのさ>
長い会議が済んで、はーっとため息つきたくなるのを我慢して、帰り道。
電車に乗っても生徒がいるから、うっかりスマホも開けずにいて
最寄り駅に着くころ、登村くんからのメッセージに気づいた。
え、1時間も前にくれてたの、わ、ごめん、と思いながら返信すると、すぐに返事が来たけど
<忙し?>
って、それだけ。
なんか用事なんだろうな、と思いながら
「あ!!今日っ!」
駅前なのに、大きな声出しちゃった。
周りの人たちにちらっと見られたけど、みなさん帰りを急ぐ人ばかり。
変な人、って思われただろうけど、ま、いいや。
<後で行くね、欲しいものある?>
って書いたけど、これって、誕生日の人に送るメッセージじゃないなと思って、書き直す。
<帰ったら、行ってもいい?>
教師としてではなく、近所のお姉さんとしてならいいよね、って言い訳しながら送信すると
<ん、待ってる>
すぐ返事が来た。
お祝い…どうしよう。
幸い駅前にいるから、ケーキでも、何でも買える。
ほんとは手作りのごはんでお祝いしてあげたいけど、時間遅くなるし…と、うんうん悩みながら駅ビルのお店をうろうろして、お寿司とローストビーフと、あたしでは作れないようなサラダを買って
どこのケーキがいいかな、ってまたうろうろして、小ぶりだけど人気のある好きなケーキを買って、急いで家に帰る。
「ただいま、ごめん、お母さん、ちょっと出かけてくる」
「え?帰ったばっかりなのにどこ行くの、ごはんは?」
「うん、帰ったら食べるから置いといて」
登村くんのお祝いに行くって話したら、なんて言われるのかなと思うから、行き先は言わない。
大袈裟にならない程度に着替えて、買ってきたものを自転車に積む。
「そんな遅くなんないと思うから、行ってきます」
「忙しい子ね、気をつけるのよ」
「はぁい」
暗い中、登村くんのとこに向かってるのを、いいのかな、って思う自分と
誕生日のお祝いができるなんて、うれしい、と思う自分がいる。
…もう、登村くんの家に着いた。
自転車の気配で気づいたのか
待っててくれたのか
ドアホン押す前に、玄関のドアが開いた。
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