お誕生日おめでとう!

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お誕生日おめでとう!

「どーぞ、ってなんか、久しぶりだよね、来てくれんの」 「うん…お邪魔します」 彼女でもないのに、いいのかな、と ここまで来てから思って、スリッパ履き替えるのをどうしよう、って躊躇してたら 「すんげぇ荷物、ははっ」 言いながら、あたしの持ってるものを 「ちょーだい」 手を差し出す。 「え、でも」 買い物に夢中になってたのはホントだけど、自分のしていることを否定しようとはしなかった、というより、したくなかったことを、どうして今になって認識してるんだろあたし…いまさらだけど、と思ってるうちに 「それ全部、俺のなんでしょ?」 「…うん」 言うか言わないかのうちに、全部持った登村くん。 「早く行こ、時間なくなっちゃうよ」 「あっ、そうだよね」 あーもうあたしってば… 切り替えよう、今日は登村くんのお祝いに来たんだからと自分に言い聞かせる。 「ね、なに?」 「ん-?」 「すげーうまそうな匂いしてんだけど」 買ってきたものをお皿に移し替えて、お茶とジュースを用意しながら 「お誕生日だから奮発したの」 「へへ、ありがと」 テーブルに並べるのを、登村くんが手伝ってくれてる。 「全部うまそー!」 「何が好きかわかんないから、あたしの好きなのにしちゃった」 ほんとは、好きそうなのどれかなって、結構悩んだけど、それも楽しかったな。 「すげー、全部好き、よくわかったね」 いまの、好き、っていうことばにドキッとしちゃうあたし…いちいち反応するのはやめなきゃ、ね。 「ほんと?よかったぁ」 「ありがとせんせ、連絡してよかった」 そうよ、あたしは登村くんの彼女でもなんでもない、先生なの、って、思ったら 「ひとり寂しい誕生日になるとこだったよ…救われた、さんきゅ、美桜せんせ」 カンパイの仕草をしてる登村くんの笑顔… ドキッとしちゃダメ!!って言い聞かせる。 「お誕生日おめでとう、登村くん」 「誕生日くらいさ、名前で呼んでよ」 「あっ、ごめん、えーと」 「あれ?名前知らねぇ?」 知らないわけない、知ってる。けど、名前で呼んだらもっとドキドキしそうなの… しっかりしろあたし!って、ひとり静かに喝入れてから 「おめでとう、海羽くん」 「さんきゅ、美桜」 カチン、とグラスの音が響く。 いきなり名前呼び捨てするなんて…登村くん、ダメだよそんなの…ずるい。
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