24人が本棚に入れています
本棚に追加
お誕生日おめでとう!
「どーぞ、ってなんか、久しぶりだよね、来てくれんの」
「うん…お邪魔します」
彼女でもないのに、いいのかな、と
ここまで来てから思って、スリッパ履き替えるのをどうしよう、って躊躇してたら
「すんげぇ荷物、ははっ」
言いながら、あたしの持ってるものを
「ちょーだい」
手を差し出す。
「え、でも」
買い物に夢中になってたのはホントだけど、自分のしていることを否定しようとはしなかった、というより、したくなかったことを、どうして今になって認識してるんだろあたし…いまさらだけど、と思ってるうちに
「それ全部、俺のなんでしょ?」
「…うん」
言うか言わないかのうちに、全部持った登村くん。
「早く行こ、時間なくなっちゃうよ」
「あっ、そうだよね」
あーもうあたしってば…
切り替えよう、今日は登村くんのお祝いに来たんだからと自分に言い聞かせる。
「ね、なに?」
「ん-?」
「すげーうまそうな匂いしてんだけど」
買ってきたものをお皿に移し替えて、お茶とジュースを用意しながら
「お誕生日だから奮発したの」
「へへ、ありがと」
テーブルに並べるのを、登村くんが手伝ってくれてる。
「全部うまそー!」
「何が好きかわかんないから、あたしの好きなのにしちゃった」
ほんとは、好きそうなのどれかなって、結構悩んだけど、それも楽しかったな。
「すげー、全部好き、よくわかったね」
いまの、好き、っていうことばにドキッとしちゃうあたし…いちいち反応するのはやめなきゃ、ね。
「ほんと?よかったぁ」
「ありがとせんせ、連絡してよかった」
そうよ、あたしは登村くんの彼女でもなんでもない、先生なの、って、思ったら
「ひとり寂しい誕生日になるとこだったよ…救われた、さんきゅ、美桜せんせ」
カンパイの仕草をしてる登村くんの笑顔…
ドキッとしちゃダメ!!って言い聞かせる。
「お誕生日おめでとう、登村くん」
「誕生日くらいさ、名前で呼んでよ」
「あっ、ごめん、えーと」
「あれ?名前知らねぇ?」
知らないわけない、知ってる。けど、名前で呼んだらもっとドキドキしそうなの…
しっかりしろあたし!って、ひとり静かに喝入れてから
「おめでとう、海羽くん」
「さんきゅ、美桜」
カチン、とグラスの音が響く。
いきなり名前呼び捨てするなんて…登村くん、ダメだよそんなの…ずるい。
最初のコメントを投稿しよう!