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「だったら泣き言言ってないで、九九でも文字でも徹底的に頭に入れるしかないんだよ。
中学だったらまだしも、高校っていうのは義務教育じゃないんだから。
その学校のレベルに定められた学力がなかったら追い出されるんだからな」
「う~……わかったよぉ」
九九が言えなくても登校しなくても、在籍だけさせてくれて卒業資格もくれる高校だってある。
治安最悪のど底辺高校だけど、ティアーなら周りが荒くれ者だらけだろうが腕力で負けやしないだろう。
けれど、こんな彼女だが「志望校」というのがあるらしく、そこでないと通う意味すらないという……
正直なところ、どうしろって言うんだ?
こんなレベルで。
高校と言えば、俺も全く見据えていないのでティアーのことばかり言ってられない。
俺は今月、中学3年生になった。
2年の終わりかけの時期に……ああなって、その怪我も治りきってない。
一応登校はしてるけど、高校に行きたいとか、目標なんて何もない。
ヴァンパイアの父親を探し当てて殺して、それから、俺も儀式で殺してもらう……
それが現在の、何より大きな目的なのだから。
高校生活なんて視界にすら入らないってもんだ。
なんとなく……それはちょっとだけ、「未練」と呼べる感情かもしれないと、思った。
高校に行きたいなんて感情はさらさらないけど、楽しみだなぁと思える気持ちすら持てないことが。
それをヴァニッシュやティアーに知られるわけにはいかない。
「俺がこの世にやり残したこと、思い残すことがないこと」が、
ヴァニッシュに殺して貰える条件なのだから。
魔物の討伐事務所というのがどんな場所にあるのかなんて、普通に暮らしてる人間が知る機会はない。
合流したヴァニッシュの案内で辿り着いたその場所がごくごく平凡な、他の部屋には普通に人の住んでるマンションの一室だったので俺は驚かされた。
角部屋とかでもなく、両サイドは普通の家庭らしい。
ちょうど遊んで帰ってきたと思わしき小学生くらいの子供が、右隣の部屋に「ただいまー」と玄関を開けて入っていく。
魔物が相手とはいえ日常的に他者を殺して回るのが生業の奴らが壁一枚挟んだ向こうで活動してるってこと、彼らは知っているんだろうか。
魔物の討伐、といっても、人間の島で討伐対象になっているのはヴァンパイアくらいのもの。
それ以外の魔物とは不可侵条約が結ばれているから、お互いに無闇に危害を加えることは許されない。
ごく一部、アクアマリンの魔物の政府が名指しで有害指定している特定個体の魔物だけは討伐が認められているけれど、それ以外を勝手に討伐したら罰則がある。
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