父を探して

6/8
前へ
/103ページ
次へ
「……先日言っていた、街の名前」  あと、俺の誕生日。  それが必要だとヴァニッシュに促される。どちらも答えた。  本当は、必要なのは俺の生まれた日じゃないはずだ。  逆算して、母さんがあいつに遭遇した時期を割り出したいだけだろう。 「……情報が、出た。 けど、これを君に見せてよいものなのか」 「なんで?」 「……知らない方がいいことも、あると思う」  覗き込むと、パソコンの画面に映っているのは俺の伝えた町の地図で、青や緑や赤に色分けされたアイコンが地図上に散らばっている。 「……赤は、ヴァンパイアに殺された遺体が見つかった場所。 緑は目撃された場所、襲われたが命は助かった者のいた場所。 青が、君にも関わる情報だ」  ヴァニッシュが適当に、青いアイコンをクリックすると、別のブラウザが立ち上がって名簿のようなものが表示される。 「……君達の名前はここにない。 君の母は公的に被害届けを出していないのだろう」 「届けを出さないって、いいのか?」 「……君の父がヴァンパイアであるということ、その経緯を届けていないだけで、法的な問題は何もない。 ただ、それに関する公的な支援を受けられないだけだ」 「支援なんてあったんだ……」  母さんや伯父さんがどこまで知ってるかわからないけど、俺にとってはもちろん、未知の情報だらけだ。  支援、といってもヴァニッシュは口にし難いようで、そこからは口ごもって、教えてくれなかった。  この時点では。 「……君の父親らしき情報は数年おきに、追跡で登録がされている個体のようだ。 識別名はロージーとなっている。 本名なのかはわからない」  名簿は、一番上にヴァンパイア自身の情報が。  その下に続く名前のリストはその犠牲者のいた場所、所在地などが書かれていて、三色のアイコンが名前の横にも表示されている。 「……これを見る限り、君が生まれて以降、被害者を殺すほどの事件は起こしていない」  名簿を見ると、確かにこの15年、緑色のアイコンはずらっと並ぶ。  ただし。 「俺が生まれるより以前、青いアイコンいっぱいあるんだけど……」  まさか、これ。全部。  俺のきょうだいってことになっちまうのか……?   人間の親が生涯、この世に出す命よりずっと多い。  吐き気がする……。 「……その」  何にも実情を知らない俺が続けざまに訊いたせいもあるだろうが、ヴァニッシュは困ったような顔で、同時に苦悶でかすかに眉根を寄せてしまった。  見かねたのか、ティアーが代わり。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加