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「……先日言っていた、街の名前」
あと、俺の誕生日。
それが必要だとヴァニッシュに促される。どちらも答えた。
本当は、必要なのは俺の生まれた日じゃないはずだ。
逆算して、母さんがあいつに遭遇した時期を割り出したいだけだろう。
「……情報が、出た。
けど、これを君に見せてよいものなのか」
「なんで?」
「……知らない方がいいことも、あると思う」
覗き込むと、パソコンの画面に映っているのは俺の伝えた町の地図で、青や緑や赤に色分けされたアイコンが地図上に散らばっている。
「……赤は、ヴァンパイアに殺された遺体が見つかった場所。
緑は目撃された場所、襲われたが命は助かった者のいた場所。
青が、君にも関わる情報だ」
ヴァニッシュが適当に、青いアイコンをクリックすると、別のブラウザが立ち上がって名簿のようなものが表示される。
「……君達の名前はここにない。
君の母は公的に被害届けを出していないのだろう」
「届けを出さないって、いいのか?」
「……君の父がヴァンパイアであるということ、その経緯を届けていないだけで、法的な問題は何もない。
ただ、それに関する公的な支援を受けられないだけだ」
「支援なんてあったんだ……」
母さんや伯父さんがどこまで知ってるかわからないけど、俺にとってはもちろん、未知の情報だらけだ。
支援、といってもヴァニッシュは口にし難いようで、そこからは口ごもって、教えてくれなかった。
この時点では。
「……君の父親らしき情報は数年おきに、追跡で登録がされている個体のようだ。
識別名はロージーとなっている。
本名なのかはわからない」
名簿は、一番上にヴァンパイア自身の情報が。
その下に続く名前のリストはその犠牲者のいた場所、所在地などが書かれていて、三色のアイコンが名前の横にも表示されている。
「……これを見る限り、君が生まれて以降、被害者を殺すほどの事件は起こしていない」
名簿を見ると、確かにこの15年、緑色のアイコンはずらっと並ぶ。
ただし。
「俺が生まれるより以前、青いアイコンいっぱいあるんだけど……」
まさか、これ。全部。
俺のきょうだいってことになっちまうのか……?
人間の親が生涯、この世に出す命よりずっと多い。
吐き気がする……。
「……その」
何にも実情を知らない俺が続けざまに訊いたせいもあるだろうが、ヴァニッシュは困ったような顔で、同時に苦悶でかすかに眉根を寄せてしまった。
見かねたのか、ティアーが代わり。
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