懺悔の夏

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「何にせよ、豊の夏休み? が終わるまで凌げればいいんだから。 そういうのが起こらないのを祈るしかないね。 地震なんかなくたって崩れる可能性もあるくらいオンボロなんだし~」 「にやにやしながら、嫌なこと言うなよ……」  そんな死に方したらそれこそ無駄死に、俺の生まれた意味なんか何にもなかったってことになりかねない。  それだけは御免だな。  わざと意地悪を言うような振る舞いといい、喋り方といい。  言葉だけならだいぶ、ティアーの目標としていた「人間の、この年頃の女」らしさは板についてきた気がする。  入口は木の板がはまってて、蝶番で開閉するタイプだった。  手前に引いて開けようとしたら、がたっと、錆びた蝶番が外れた。  二つのネジ穴の上の方だけもう使い物にならなくなっていた。 「あ~あ。これじゃもう、倒れないようにただ嵌めておくだけって感じ」 「そうだな…… まぁ、長期間使うわけじゃないし。 夏なら隙間風もそんな気にならないだろ」 「我慢しなきゃだね」  小屋の中も長年の埃が積もりまくっている。  ここには木で組んだバケツくらいしか備えてないとあらかじめ聞いていたので、雑巾だけは持ってきている。  この汚れっぷりならモップくらいは欲しかったな。  余計な手荷物は増やしたくなかったから仕方ないんだけど。  近くの水場に行ってバケツに水を汲んで小屋へ戻る。  ここの水質は保証出来ないから、ティアー達はともかく俺は飲まない方がいいらしい。  ここへ来る前に町の商店で買った水を飲んでいる。  どうせ、ヴァンパイア探しで毎日町へ出歩くんだし、その度に軽食も買って持ち込むことになるだろう。  どうにか完全に日が落ちる前に室内を磨き上げることが出来て、これまた埃っぽい寝袋を外に出て力任せに叩いて埃を払って。  疲れ果ててそのまま寝落ちしてしまった。  夜中に帰ってきたらしいヴァニッシュにも気付かないくらい、深く深く寝入っていた。  森に住んでいると、日が昇ると自然に目が覚めるようになるんだよ。  ティアーがそう言っていたけど、初日だからかもしれないが俺はそうはならなかった。  元から寝起きが良くないし、日中でも頻繁に眠たくて授業中に寝てしまうことも多かった。 「……日中眠たくなるのは、ダムピールによく見られる特徴だ。 ヴァンパイアが夜型の魔物だから」  俺の知らぬ間に帰宅していたヴァニッシュが起きたらそばにいて、そんな話をしていたら教えてくれた。
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