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ダムピールっていうのは、ヴァンパイアと人間の血が半々で流れているんだから。
その特性を少なくとも半分は受け継いでても不思議じゃない、っていうかそれが自然なんだよな……
わかっていてもなんだか少し、気持ちが落ち込む。
日中の眠気を揶揄されることも多かったしな……。
そんな心境が顔に出ていたのか、ヴァニッシュが軽く、俺の頭に手を置いてぽんぽん叩く。
ティアーが落ち込んでいる時にそうしている光景は何度か見たが、俺がそうされるのはこれが初めてだ。
「ヴァニッシュは……どうしてここまで、俺に付き合ってくれるんだ?」
今でこそ、ティアーも俺に対して当たりがきつくなくなったけど。
実際、当初の彼女の主張通りではあるんだ。
ヴァニッシュが俺の目的に付き合ってくれることに何のメリットもないし、あまつさえこんな風に接してくる俺を、最後は殺さなきゃいけない。
そんな約束……出会った頃の俺はただ自分が終わりたいばっかりでヴァニッシュの立場なんかまったく考えられなかったけれど、今は少し冷静になって、そんなことを訊ねていた。
「……俺をワー・ウルフとして作り出したのは、ヴァンパイアハンターとして生きてきた人間だった。
銀を持つ俺を見つけてワー・ウルフに変えた目的もその仕事に役立てるためだった」
ワー・ウルフというのは自分を作った人間の命令には絶対逆らえない生き物らしい。
ヴァニッシュの性格からして、相手が世の中の害にしかならないヴァンパイアだとしたって、そんなことを自らしたかったはずがないだろうな……。
「……俺が手にかけたヴァンパイア達の中には、豊のように元はダムピールだった者も少なくなかった。
ヴァンパイアになりたくてなったわけではないのに、人間からは怖れられ常にハンターに追われ、最後は俺に殺された。
嘆いていたし、俺に対してはもちろんだがそれだけでなく。
自分の生まれたこの世界の成り立ちも、ダムピールだからと後ろめたく生きるしかない人間の社会そのものを恨んでいた。
誰も、彼も」
後悔と同時に決意を滲ませて、銀色の瞳が真っ直ぐ俺を見据える
「……豊がこのまま生きていて、いつかそんな運命が待ち受ける可能性もある。
そうなりたくない、逃れたいという気持ちがあるのなら、俺には否定できない。
望まぬ死を与えてきた俺だからこそ、せめて……
死を求める者がいるのなら、それを与えるのは俺の責務だと思うんだ」
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