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 はらはらはら、と青空から恋が落ちてきた。  誰もいないグラウンドで僕は頭上を通り過ぎそうな『恋』をジャンプして摑まえる。  ひとつ息をついて静かな校舎に入り、教室の扉を開けた。 「墨田昭人、遅刻だぞー」 「すいません。困ってるおばあちゃんを助けてました」 「困ってるおばあちゃん撲滅委員会でもやってるのかおまえは」 「はい。書記です」 「会長誰だよ。はやく座りなさい」  担任に促されて自分の席に向かい、何事もなかったかのようにホームルームが再開した。  そしていつものように華原は隣の席で目を輝かせる。 「今日のおばあちゃんは何で困ってたの?」 「散歩中のペットがちょっと目を離した隙にいなくなっちゃったんだって」 「え、それ大変じゃん。犬とか?」 「キリン」 「どうやって見失ったのよ」  ころころと笑う彼女は僕が入学当初から見ていたものと変わりなかった。でもそれは華原色の笑顔で、華原恋色のものではないのかもしれない。 「で、結局キリンは見つかったの?」 「ああ自力で家に帰ってきたらしいよ」 「(しつけ)がなってるのね」 「色々教えてるらしいよ。フリスビーとか曲芸とか」 「おばあちゃん天才調教師!」  隣の席の彼女のツッコミは相変わらずよく響いて「華原色うるさいぞー」と担任に注意されていた。華原は毎度のごとく「すいません……」と恥ずかしそうに顔を俯かせる。 「君の声量は1か100しかないのか、華原恋色さん」 「いやツッコミは大声でやらなきゃいけないって不文律が……って、え、また?」  驚いてこちらを向く彼女に、僕は小さくため息をついた。 「それはこっちの台詞だよ」
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