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衝動
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、
くっきりとした二重。形の良いアーモンドアイ。長く存在感のある睫毛。
月明かりに濡れ、妖しく光る大きな黒眼。
色白の肌は、蒼白く光り。
唇は、血塗れたように赤い。
その美しさに魅力され、僕の心臓が大きな鼓動を打つ。
「隣町で起きた、通り魔事件。……知ってるよね?」
「……」
「あの犯人。……実は、僕なんだよ」
……ハァ、……ハァ、……ハァ、
沸き上がる、黒い衝動。
人気のない、暗いあぜ道に組み敷かれた彼が、静かに僕を見つめる。
開けた白い甚平から覗く、白くて細い首筋。
ごくり、と喉を鳴らした後、その首筋に両手を掛け、力一杯絞める。
瞬間──
ふわりと浮かび上がる、幾つもの蛍火。
光っては消え、消えては光るそれは……
まるで──盆を迎えた、死者の魂。
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