練習最終日

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「……あれ。さっきまで、白川くんいたよね」 「うん。いたいた!」 「……もう、帰っちゃったのかなぁ」 解散後。いつものメンバー──麻生と山口、そして婦人組の三人が集まって、井戸端会議を始めていた。 「……なんか、雰囲気違ってたよねぇ~!」 「うん。お洒落だし、いい感じだったよね」 「ねー!」 「──えっ、俺の事?!」 いつもの如く、婦人組が話に花を咲かせていると、興味を示した長田が千明を引き連れて混じる。 「違いますよー!」 「最近転校してきた、白川くんの事です」 「背が低くて、女子より細くて、こ~んな小っちゃい顔してて……」 「モデルみたいにすっごい綺麗で。……飛び抜けて、美人さんなんです」 「……美人?!」 「はい。もう、すっごい美人です!」 彼女達の言葉に、長田が食いつく。 チラッと、千明を横目で確認しながら。 「……へぇ。どんな子なの?」 「えっと、ですね。何考えてるか解らなくて、近寄りがたいんですけど……」 「ミステリアスな雰囲気が、逆にいいなって」 「──解る! 私も、さっきそう思った!!」 キャーッ、と一斉に、婦人組がお互いの手を叩いて燥ぐ。 「……確かに格好良かったよね。紗栄子も、そう思うでしょ?」 そんな三人を眺めていた山口が、腕を絡ませながら、麻生の顔を覗き込む。窪塚と同じ、探るような目付きで。 それに気付いた麻生は、困惑したように笑顔を取り繕った後、泳がせた視線を真っ直ぐ此方に向けた。 「……うん、そうだね」 ドクンッ── 少しだけ、はにかんだ声。 向けられた視線が、もし僕を捉えているのだとしたら…… 「やっぱ、紗栄ちゃんもそう思う?」 「格好いいよねぇー!」 「……って、あれあれぇ? 紗栄ちゃんの顔、真っ赤になってなぁい?!」 麻生の台詞や態度に反応した三人が、麻生を取り囲んでキャアキャアと揶揄う。 「──!!」 バッ、 慌てて頬を、両手で隠す。 「……そ、そんなんじゃ……」 「嘘だぁ。ちゃあーんと顔に書いてあったの、見たんだからねぇ~!!」 「どれどれ」 「見せてぇー!!」 逃れるように顔を伏せるものの、執拗に麻生の顔を覗き込む三人は、次第にヒートアップしていき…… 「てゆーか。麻生さんが狙ってたのって、……透じゃねーの?!」 その空気を読まない長田の放った一言で、しん、と静まり返る。
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