練習最終日

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「……え」 信じられないとばかりに、半歩下がる山口。必然的に、麻生の腕から両手が離される。 ゆっくりと、麻生から僕へと向けられる、視線。 その眼光は嫉ましさと攻撃を含み、刺すように鋭い。 「……」 湿気を含んだ生温かい空気。 さわさわと、木々の葉が擦れる音。揺れる提灯。 地上にまで届いた風が、麻生さんの横髪を揺らした後、僕の頬を不気味に撫でる。 「………ち、違うわよっ!!」 ピシャリと言い切る、麻生の叫び声。 その大声と、明らかな拒絶に驚きながらも、真っ直ぐ麻生さんを見る。……瞬きもせず。 だけど、それすら嫌だったんだろう。 気まずそうに視線を泳がせた後、麻生さんが顔を伏せ── 「私は、……丸山くんも、白川くんも、どっちも好きじゃないから……!」 タッ…… そう言い残して、走り去る麻生。 外灯の殆どない暗闇へと、自ら飛び込んでいくかのように。 「……」 その後ろ姿を──長田は勿論、揶揄っていた婦人組の三人も、手を離してしまった山口も。勿論、僕も。 追い掛けられず……その場に立ち尽くしていた。 ミーンミンミン…… それから、一週間が経ち 夏祭り本番の日を迎えた。
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