花とてんびん

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   普段、朝の情報番組なんか見ないオレが、珍しくテレビをつけた。  そうしたら、ちょうどテレビ占いなんかをやっていた。  てんびん座は堂々の一位だった。  スタイル抜群の美人アナウンサーが、オレのてんびん座を甘い声で祝福していて、思わず目を見張った。 『予想外のことが起きたときこそチャンス!  たまには、運命に流されてみるのも良いでしょう。今日はきっと、人生最高の一日☆』  人生最高の一日……か。  占いのたぐいは信じない。  この世には神も仏も存在しない。  だから何にも祈らない、というのがオレの信条だった。  なのになぜ今日に限って、真面目に聞く価値もないような言葉に耳を傾けてしまったのか。  なぜ、今日に限って。  それは、顔が好みの女神(アナウンサー)のお告げだったからじゃない。  泥棒であるオレが、ターゲットの家に忍び込む日ーーそれが今日だったからだ。
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