Happiness is

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▽  わたしと香月は、同じ高校の2年生だ。1年半ほど前から猛威を振るっている新型のウイルスに、わたしたちの学年はことごとく影響を受けていた。  入学式が終わった次の日から、まだ先生たちの顔もクラスメイトの顔もほとんど覚えていないのに、いきなり大量の課題を渡されて休校になった。  次に学校に行けたのは、6月に入ってからだった。初めのうちは分散登校で出席番号が奇数と偶数に分けられていた。クラスメイトが全員そろったのは6月も半ばを過ぎたころ。  出席番号が前後である香月と顔を合わせたのは、その日が2回目だった。  入学式の日に席が隣だったことに始まり、そこからなぜかいくら席替えしても隣か前か後ろにいるものだから、必然的に仲良くなった。  香月は、身長が高くハンド部のエースで、黙っていれば爽やかイケメンに分類されるほどカッコいいのに、残念ながら口が悪くて行動もガサツ。提出物もよく忘れるし、よく部活動で怪我もしていた。  席が近かったわたしが必然的に世話係(?)になり、「香月」「日菜子」と呼びあうように。気がつけばクラスメイトから「夫婦」と呼ばれるくらいの仲になって、2学期の終わりごろには、担任の先生にまでいじられる始末。  揶揄われる度に、香月は面倒くさそうに溜息を吐いていた。それを見るたびに、チクリと胸が痛んだ。  近くにいたからこそ、知ってしまった。本当は照れ屋で、だから口が悪くなってしまうこと。  誰よりも懸命に長い時間ハンドボールの練習しているから、身体を壊してしまいがちなこと。  本当は自分の番じゃないのに、クラスメイトが困っているといきなり挙手して代わりに間違えて、げらげら笑ってる、そんなやさしい心の持ち主だってこと。  だけれども、彼はわたしとの関係を揶揄われるとき、本当に嫌そうな溜息を吐き出す。だから、この気持ちは秘密にしなきゃいけないんだって、そう思っていた。
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