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Happiness is
▽
「もしもし、香月?」
「おう」
電話越しに聴こえてくるのは、相変わらずぶっきらぼうな声。
「元気?」
「日菜子さぁ、俺が元気じゃなかったことある?」
「ないけど」
心配なんだもん、と頬を膨らませたわたしに、電話の向こうで大きな溜息を零したのは、恋人の香月だ。わたしたちは週に2,3回、こうして電話をしている。
時は8/31、PM5:00。ベッドに寝転がってゲームでもしながら電話しているのだろうか、時折寝返りを打つ音がする。かくいうわたしも、スマホは持たずにワイヤレスのイヤホンを耳につけて、雑誌をめくりながら電話をしている。
「そもそも、部活の大会終わってから俺外出てねーし」
「何してるの」
「筋トレかゲーム」
「ムキムキになってe-sportsの大会でるの?」
「……お前e-sportsの意味わかってる?」
「それくらいわたしも知ってるから!? そこまで馬鹿じゃないから、今のはギャグだから!?」
「あっそ」
相変わらず素っ気ない。いや、今までもそうだったけれど。会えていない現状だと余計に、その素っ気なさが何だか心に刺さってくる。
「外出てなくても家族内感染とかあるじゃん」
「あー、それニュースでやってたな、確か」
「緊急事態宣言も延長でしょ? 学校オンライン決定だってメールで連絡来てたよ」
「マジか」
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