勇者、変態疑惑をかけられる。

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勇者、変態疑惑をかけられる。

 その日、町に激震が走った。  ギルドのお尋ね者掲示板に、とんでもない貼り紙が出されたからである。 『魔王のしりの毛を盗んできた人に、100万ギル差し上げます』  この世界を脅かす魔王、その魔王がお尋ね者扱いされるのは全然いい。  しかししりの毛って?お尻の毛?しかもこの貼り紙の連絡先、勇者なんですが? 「勇者……魔王様のお尻の毛なんか泥棒してどうする気だ?魔術をかけるなら髪の毛で充分なのに」  たまたま通りがかった魔族の俺、思わずぶるりと震える。  ちなみに魔王はガチムチマッチョ系のイケメンで、勇者は爽やか系イケメンである。まさか、勇者にはそんな趣味があったのだろうか? 「爽やか系イケメンの勇者✕マッチョの魔王様……アリね!」  一緒にいた俺の部下A♀が、目をキラキラ輝かせながら言った。俺はドン引きである。Aが腐女子であることは知っていたが、まさか勇者と魔王様のカップリングで同人誌なんぞ出したりしないだろうな?そんなものが発見されてみろ、ナイーブな魔王様がますます引きこもってしまうから全力でやめてほしいのだが。 「こんな募集を出すなんて……!絶対許せません!」  そして俺の部下B♀はプンプンと怒って言うのである。 「魔王様のお尻の毛は一本しかないんですよ!?それがとってもセクシーで可愛いのに、そのたった一本を奪おうなんて!断じて許すことはできません!魔王様、ただでさえ下半身の毛がツルツルですっごく気にしてるのに!!」 「ねえ待って?ちょっと待って?なんで君そんなこと知ってるの、ねえ?」  こいつもこいつで変態だった!と俺は頭を抱える。なんで異性のはずの魔王様のハダカ事情、そんなに赤裸々に知ってるのだろうか。  そういえば、最近風呂でもトイレでも視線を感じて怖い、ストーカーされてるかも、なんて魔王様が言ってたような? ――魔王様の周りにはまともなヤツがいないのかよ!  俺は誓った。  せめて、せめて自分だけは常識人として魔王様をお守りしなければならないと。そう。 ――魔王様!貴方の貞操はこの俺が必ずお守りしますからねえええ!  ひとまずは、敬愛すべき魔王様のため。こんな募集を出しやがった勇者を抹殺するところからスタートである!
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