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翌朝、恭一は約束通り九時ぴったりに迎えに来た。朝食を食べ終えたのを見計らっていたかのようなベストタイミングだった。がっしりした男がロビーの真ん中で堂々と立っているとよく目立つ。
「おはようございます、真鍋さん。すごい、時間ピッタリですね」
正確に動かないと気が済まないんだよ、と、祥平がうんざりした様子で後ろから口を出した。
「よく眠れた? 朝食もちゃんと食えた?」
恭一は修也にはにこやかに言いながら祥平の頬をつねっている。自分よりも祥平とは兄弟のようで少し妬けた。
「明弘も体調オッケーか?」
そこで初めて後ろに明弘がいることを知った。
「いつの間に」
「すんません、影薄くて」
「じゃ、行くか。観光」
キリっと決めてサングラスを掛ける。昨日もサングラスを掛けていたが、お気に入りなのだろうか。似合わないことはない。むしろ似合いすぎていかつさに拍車がかかっている。修也が思ったことを、祥平が言った。
「だからサングラスはやめとけって。悪目立ちもいいとこだぜ」
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