金色の鎖

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Hは自室のベッドに横たわっている。 もうすぐで昼の二時だ。 (お昼ご飯を食べなくちゃ……) Hの頭もお腹も栄養補給を訴えているのに、動く気力が全く湧いてこない。 仕方なく、手近にあったペットボトルのお茶で心療内科からもらっている頓服を一錠、喉に流し込んだ。この一錠で動く気力を起こしたかったのに、Hの頭はボンヤリとしてきた。 今日は両親は買い物に出掛けていて、Hは家に一人だ。おそらく、夕方までは一人のままだろう。 誰もいないと自堕落になるのを情けないと感じつつ、でもこれが、強がりを捨ててしまった本当のHの姿でしょうがないのかもしれない。 Hの頭はトリップし始める。 心の中のHは、崖っぷちに立っている。 空は薄青い色で、薄く雲がたなびいている。寒くも暑くもない。 振り返ると、花の咲いていない緑の草原が見える。 崖っぷちには草も咲いていない。 崖の下を覗くと、軽く波があるだけの穏やかな海だ。とても美しい、青とも碧とも言えない魅惑的な色……。 今すぐ崖から飛び降りたら、もう苦しまなくて済むのかなとHは本気で思った。 あの美しい海に飛び込んで、そのまま溶けてしまいたい。 そう願うことをHは、悲しいと思わなくなってしまった。
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