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「どうせ、彼女とうまくいってないとかじゃない?お巡りさん、まだ結婚してないみたいだし。」
「たしかに!指輪してないもんね!漫画で読んだ展開だと、彼女と喧嘩か彼女が浮気かってとこだよね!」
「おーい、勝手に俺の悩みを決めつけるなよ?」
俺の話なのに、俺抜きで現在進行中って、ある意味恐ろしい。
「え?違うの?」
聞いてみたいって気持ちも事実。
「いや、違うというか、まあ、もしそうだったとして。君たち高校生の若い感覚からすると、どうなんだ?」
「急に素直!まあ、もしもだよ?浮気してたとしても、カッコよく引き留めてほしいなあとか」
「それ、いい!めっちゃときめくやつ!」
「だよね⁈ストレートに行くな!とか、ベタだけど言ってくれたら、もっと好きってなるよね〜」
まるで、高校の女子たちの会話を盗み聞きしてしまったような、ちょっとした罪悪感に駆られていたが、妙に納得してしまった。
もちろん、俺の恋人は女の子でも高校生でもない。
そんなのは重々承知の上だけど、今まで上辺だけの恋愛経験を積んできた俺にとって、高校生のアドバイスは目から鱗ものだった。
「それに!もたもたしてたら、誰かに奪われてるとかもよくあるパターンだよね?」
「そうそう!後から後悔するパターンね、切ないよね〜」
奪われる、その言葉に俺の心臓が嫌な音を立てた。
そんなこと、湊に限って。
そう思いたいのに、拭いきれない焦燥感。
よく考えれば、湊がこの先、俺だけを好きでいてくれる保証はどこにもない。
それに俺たちが恋人になって、たったの一年と少し。
おまけに30歳のおじさんとくれば、いつ若くてカッコイイ男を好きになったって仕方のない話だ。
「お巡りさんイケメンだけど、油断は大敵だよ?少しは役に立ったかな?」
「うん、ありがとう。参考になるよ」
いきいきとした足取りで帰る高校生の後ろ姿を見送りながら、湊のところへ駆け出してしまいたくて堪らない。
早く時間が過ぎれと時計を眺めすぎた俺は、珍しく、いや、この交番に配属になってから初めて先輩に怒られることになった。
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