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『おつかれさまです。煌太さん、今日は夜勤になったんですか?』
『もしかして、忙しいとか?』
『朝ご飯、作っておくのでちゃんと食べてくださいね』
割れそうな頭痛を感じて目覚めた俺の目には、ファンシー感溢れる家具の数々。
「お兄ちゃん、やっと起きたか。もう昼過ぎだけど、今日は仕事、休みでいいんだよね?」
「ああ、沙優里か。悪いな、昨日は突然に押しかけて」
「それはいいけど、携帯。昨日の夜から何回も鳴ってたから、確認した方がいいんじゃない?」
痛む頭で携帯を見れば、湊からの何通ものメッセージが表示されていて、嫌でも昨日の俺らしくない行動を思い起こさせた。
結局、俺はどうしても湊の帰る家には帰りたくなくて、コンビニで袋いっぱいに酒を買っては6歳下の妹の家に押しかけたのだった。
湊に帰れないと一言も連絡をせずに、帰ってこない俺を心配した湊のメッセージが更に俺の頭を痛くさせる。
「私、もうすぐ仕事行くけど、帰れる?」
「もう大丈夫だ。ありがとな、沙優里」
「それはいいけど、珍しいね?お兄ちゃんがやけ酒するなんて。ってか、初めて?なんかあったの?」
「ん〜ちょっと、な」
湊と司って呼ばれた野郎の会話を思い出せば、また胸がざわつく。
司って野郎が俺の湊を好きだとか言ったことも、湊とやたらと親しげに話してたことも、何もかも気に入らない。
だが一番気に入らないのは、湊が俺に嘘をついていたことだ。
大のとこに行くってわざわざそんな嘘ついてまで、あいつに会ってる理由って、一体なんなんだ。
気がつきそうで気がつきたくない、矛盾した俺の心も何もかもが俺らしくなくて、湊のことになると途端に情けなくなる俺に嫌気が差す。
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