どうせ終わるなら、俺の手で。

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「俺の聞き間違い?だったら、おまえが大のとこに行ってたって嘘ついてたのも、俺の聞き間違いだっていうのかよ?」 「煌太さん、それは」 「司って奴に3週間も会いに行ってたんだよな?俺に嘘ついてまで。そんなにあいつに会いたかったのかよ。俺よりも」 「それは、違う…」 「何が!違うんだよ!じゃあ、教えてくれよ。司って、湊のなんなの?」 冷静になれ、30歳のおっさんに責められて湊が怯えているだろう? 一度沸騰した感情を急速に冷ます方法を知らない俺は、声を荒げて感情のままに湊にぶつけていた。 だからきっと、罰があたったんだ。 「…煌太さんには、関係ない人だ、司は」 俯いて湊が言うその言葉は、俺を悲しみの渦に連れ込むには十分すぎるほどの引き金だった。 「そうかよ、もう俺には言う必要ないってことか?司って奴のことが好きだからとか?それならそうと、最初から言えよ、湊」 「ち、違う!そういう意味じゃなくて!」 「もう、いいよ。どうせいつかは終わるって思ってたし、9歳も離れてるんだ、うまくいくわけないよな?」 「煌太さん!俺の話も聞けって!」 「なに?おまえが俺以外の奴を好きになったって話?悪いけど俺、そんな話聞けるほどメンタル強くないから」 湊が何かを言いかけるたびに、意気地のない俺はその言葉をシャットアウトする。 「おいっ!なんで俺の話聞いてくんねーの⁈俺、煌太さんの恋人だよね⁈」 「俺はそうだって思ってたよ。でも、湊にとってはそうじゃないのかもな」 「意味わかんねーし!じゃあ、俺が他のやつのとこに行ったっていいのかよ⁈」 俯く俺の視界にふいに映る影と椅子がひっくり返る音、そして諦めた俺と正反対に興奮している湊の声。 引き摺られるように顔を上げれば、涙でぐしゃぐしゃになった湊の顔。 「もう、いいよ!」 乱暴に玄関の扉を閉める音。いなくなった湊の気配。 「ああ〜…。しんどいな、マジで」 すっかり冷めた甘いカレーが、やたらとしょっぱく感じたのは今日が初めてだった。
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