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覚悟を決めた、俺の願い。
湊が家を飛び出すなんて、今回が初めてじゃない。
けれど、なんとなく、いつもよりも後味が悪い気がして胸がざついて仕方ない。
結局、一睡もできないまま、朝を迎えてしまった俺に残ったのは、後悔だけだ。
どうしてあの時、もっと冷静になれなかったのか。
どうしてあの時、湊の話を聞いてやれなかったのか。
どれだけ後悔しても元に戻ることはないのに、湊のことになると抑えの効かない自分が本当に情けなくて、嫌いになる。
時刻は朝の7時。携帯のメッセージには、何も表示されていない。
「朝、早くにごめんな、大」
「え?ああ、煜太さんか。湊となんかありました?」
「あ、ああ。ちょっと言い合いになっちゃって、湊、そっち行ってる?」
「ああ〜来てないっすよ?ってか、知らないんすか?」
正直に言えば、ほんの少しだけ、望みを掛けていた。
もしかしたら、いつものように大のところに転がり込んでいるんじゃないかって。
そう思って大に電話を掛けたが、結局、その望みも大の一言であっさりと打ち砕かれてしまった。
しかも、大の口振りでは俺の知らない、湊の事情があるようだ。
「知らないって、何を?」
恥を偲んで、大に聞いた。思えば俺は、恋人だと言いながらも湊のことをよく知らないようだ。
「あいつ、マジでなんも言ってないんすね。ん〜俺が言ったって、言わないでくださいよ?」
そう言って、大が教えてくれた事実は、俺を驚愕させるには十分すぎるものだった。
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