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大が言うには、湊の家族に問題があるらしい。
「あいつが高校の時に、親御さんが再婚したんですよ。で、それなりにうまいことやってたみたいなんすけど、お父さんが結局、家出てっちゃったらしくて。お母さんは朝から晩まで働くはめになって、身体壊しがちなんすよね。」
家族の話を言いたがらない湊に、ようやく納得がいった。
きっと、知られたくはなかったんだ。
俺が知ってしまえば同情でもされると思っていたんだろう。
やたらと意地を張る湊を思い出しては、恋しかったり不甲斐ない自分に情けなくなったり。
大の話を聞きながら、俺はいつも感じることのない感情に振り回されている。
「でも、弟もバイトするようになって、だいぶ生活もきつくなくなってきたって言ってたんすけど」
弟、の言葉にいつしか湊が言っていたことを思い出す。
確か、仲は良くないと言っていたはずだ。
「正確には、お母さんの連れ子で湊の一つ下っすよ。それに、ああ〜、あとは湊から聞いてくださいよ、マジで」
「は?大、おまえそこまで言うなら教えろよ!」
仮にも職業お巡りが、脅すような言い方をするなんて、言語道断だろう。先輩に聞かれたら、きっと大目玉だ。
だけど、恋人のことを知りたいと思うのは、至って普通のことだろう。
肝心の恋人が俺に何も教えてくれないのなら、どんな手を使ったとしても聞くしかない。
そう思って大に勢いよく、食ってかかったのだけど、大は呆気なく「じゃあ、俺も仕事あるんで」と言って、電話を切ってしまった。
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