俺に出来るのは、ただこれだけ。

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「司とようやく別れられたのは、高校3年の秋」 「それって、お父さんがいなくなってから」 「そう。父さんがいなくなって、毎日必死で。気が付いたら俺も司も兄弟になってた」 言いながら湊はきっとあの時のことを思い浮かべているのだろうと思った。 どこか切なそうに遠くを見つめる瞳は、優しく眦を下げている。 いいな。欲望の言葉が喉元まで這い上がってきた。 湊の状況を考えれば、兄弟になる選択がどれほど辛いものだったろうか。正直、俺には想像もできない。 もし、俺が司なら弟であることを受け入れられたのだろうか。 きっと出来ない、だけどしなくちゃならなかった。家族を守るために。 一回りも年下の司にみっともなく嫉妬しながら、同時に自分が勝てるわけがないと悟る。 だとしたら俺は、湊にとってなんなのだろうか。 「だからって言ったら、司に失礼だけど。俺、そっから自分で言うのもあれだけど自暴自棄みたいになっちゃって。どうせ神様は俺の味方してくれねーじゃんってなって、いわゆる尻軽男になっちゃったわけです」 「そっからは煜太さんの知る通り」と湊がおちゃらけた声で言った。
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