俺に出来るのは、ただこれだけ。

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「それが湊が隠したかったこと?」 話は終わり、というような雰囲気にそう聞くと、腕の中にいる湊の肩がピクッと跳ねた。 「そうだよ?ね、幻滅したでしょ?」 「なんで?全然。むしろよく話してくれたって嬉しかったよ」 本心だった。育った環境はそれぞれ違うと湊は言ったが、本当にそう感じさせられる。 言葉にすること自体、心が苦しくなるものだろう。なのに今、勇気を出して聞かせてくれた。 だからこそ、全部聞きたい。エゴなのか嫉妬なのか、見分けがつかない感情が胸を渦巻いていた。 ぱっと振り返った湊が俺を見た。その瞳には決壊寸前の涙の幕がびっしりと張られていた。 瞬間、決意した気持ちが揺らいだ。泣かせたくて聞いたわけではないのに、結局泣かせることをしているのだろうか、俺は。 矛盾する気持ちが決断力を鈍らせていた。もう、このままでもいいんじゃないか、湊が俺の側にいるなら、と。 もういいと言いかけた時、ギュッと湊が俺の服を握り、じっと瞳を見つめられた。 思わずごくりと唾を飲み込み、湊の言葉を待つ。 「…司と別れたのは本当だった。けど俺、どうしてもあいつを放っておけなくて」 「…うん。それで?」 「それで俺たち、その、しばらくねてたんだ」
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